季節に限らず、特に高齢者は「寝る時に足がつる…」という方は多いです。
足がつるという症状はふくらはぎに起こるケースが多く、そして、そのふくらはぎの筋肉痙攣こそ「こむら返り」という症状です。
今回は、高齢者のみならず若年者や、中高年の方も1度は経験したことがあるであろう「こむら返り」の症状や、メカニズム、対策方法、予防方法について解説します。
足がつる「こむら返り」の特徴について
こむら返り(腓返り)とは「こむら=腓(ふくらはぎ)」部位に起こる筋肉の痙攣のことを指します。
急激にふくらはぎの筋肉が収縮し激痛が走る症状のことをいい、特に運動時や就寝時に発生頻度が高くなります。
痛みは数十秒、長ければ数分間にわたって持続する場合もありますがしばらく安静にしていれば痛みは治るケースがほとんどです。
医学的には「腓腹筋痙攣(ひふくきんけいれん)」と呼ばれ、ほとんどがふくらはぎですが、足の裏、太もも、背中、肩など様々な場所で引き起こされます。
こむら返りは筋肉の異常。足がつるメカニズム
ではこむら返りが起こるメカニズムについて解説します。
人間の体は脳が動きを支配しており、すべて脳からの指令によって筋肉を動かすことで様々な動きができるようになっています。
筋肉と筋肉をつなげる役割の腱という部位にある腱紡錘と呼ばれるセンサーと、筋肉内にある筋紡錘と呼ばれるセンサーによって筋肉の伸び縮みを調節しています。
筋紡錘によって筋肉が伸び過ぎるのを防ぎ、腱紡錘によって縮み過ぎるのを防いでいます。
このうち腱紡錘の働きがうまくいかなくなると異常が起こり、筋肉が収縮し続けることによって筋肉の痙攣が起き、こむら返りになります。
こむら返りになる原因
ではどのような状態の時、どのような人に対してこむら返りはなりやすいのかを解説します。
まず、最もこむら返りになりやすいのは、
- 運動中
- 就寝時
です。
【こむら返りになる原因】ミネラル不足
人間の体ではカルシウムやマグネシウム、カリウム、ナトリウムなどの「ミネラル」と呼ばれる栄養素が非常に重要な役割を果たしています。
ミネラルは、エネルギー源となるタンパク質や脂質、炭水化物の分解や合成の手助けをしたり、骨や歯の形成、神経の伝達に関わったりなど、生命活動を営むにあたって必要な成分です。
筋肉はこのミネラルのバランスが保たれている状態で初めて正常に収縮をします。
このミネラルが不足すると筋肉がうまく稼働しなくなり、こむら返りになります。
運動によって代謝が上がり汗をかくと、体内から汗として水分が失われ、一緒にミネラルも排出されます。
その結果、ミネラルが不足し、こむら返りになりやすい状態に陥ります。
就寝時でも夏場などに寝汗をかいたりすると、同じようなことが言えます。
また、就寝時は指先が伸びた状態になりますが、その際ふくらはぎの筋肉は収縮した状態になります。
数時間にわたって収縮した状態が続いていると、これもまた、こむら返りになりやすくなります。
【こむら返りになる原因】冷えや血行不良が原因です!
また、冷えや血行不良によってもこむら返りになるリスクは高くなります。
冬場など気温が下がってくると血管が収縮し、血行が悪くなります。
血行が悪くなるとミネラル分が全身に行き届きにくくなり、栄養の供給がうまくいかなくなるためです。
【こむら返りになる原因】筋肉の量が減るのが原因です!
こむら返りは年代問わず発症する可能性がありますが、若年世代よりも中年以降の世代の方が頻度、リスクは上がります。
理由としては若い時よりも筋肉の量が減るからです。
個人差はありますが一般的に加齢とともに運動量は減っていき、その分筋肉量も減っていきます。
筋肉量が減ると筋肉内の血液循環は悪くなり、筋肉に疲労物質が溜まりやすくなり、ミネラルの供給がうまくいかなくなるため、筋肉量の多い若年世代と比べて中年以降の人の方がこむら返りになりやいのです。
他にも、動脈硬化や糖尿病、神経障害など様々な症状の進行や、服用している薬の副作用の影響もあります。
また、妊娠中の女性もミネラル不足に陥りやすいため妊婦も、ミネラル分を補うなど注意が必要です。
【対処方法】こむら返りになった時に役立つ3つの対処方法
では実際にこむら返りによって出た痛み対する対処方法と、和らげる方法について説明します。
【こむら返りの対処方法】筋肉を伸ばしてほぐす!
こむら返りは突如として発症しますが、正体は筋肉が収縮している状態です。
なので起きてしまったら筋肉をほぐすことを心がけましょう。
一番簡単なのは、スポーツの試合中にもよく見るつま先を掴んでふくらはぎを伸ばすことです。
縮みきった筋肉を伸ばしてあげることで、痙攣している状態からほぐせます。
伸ばしたあとのマッサージも有効であり、硬くなった筋肉をほぐすことによって再発を防ぐことも重要なケア方法です。
【こむら返りの対処方法】薬を服用する!
筋肉の痙攣に効果的な薬で「芍薬甘草湯」という漢方薬があります。
漢方薬は実際、効果が出るまでに多少時間がかかり即効性はあまり求められませんが、中には服用してすぐに効果を発揮できるものもあります。
この芍薬甘草湯は服用して5〜10分で効果が出る、漢方薬の中では珍しい薬なので症状が出てから服用しても痛みを抑えることが十分可能です。
内科や整形外科などで医師に相談すれば処方してもらえると思います。
値段も安価なので、こむら返りの症状にお悩みの方は1度相談されてみることをお勧めします。
ただし服用し過ぎると血圧を上げてしまう作用があるので、疾患を持ちで治療中の方は自己判断で服用するのではなく、医師か薬剤師に相談するようにしてください。
【こむら返りの対処方法】患部を温める!
こむら返りの起きやすい原因の一つである血行不良を改善する方法です。
足に沿って擦るようにマッサージをしたり、足を冷やさないように温かいタオルなどをあてて筋肉をほぐしてあげることも対処法の1つになります。
こむら返りの痛みを和らげる6つのツボ
こむら返りの対策として、ツボを押さえるという方法もあります。
症状が出たときに押すと効果のあるツボについて説明します。
【痛みを和らげるツボ】足三里〈あしさんり)
スネの上の部分で、膝のお皿からすぐ下の位置から数センチ外側にあるポイントです。
強く押しすぎず、適度な刺激を与えることで胃腸機能の回復に効果があります。
【痛みを和らげるツボ】承筋(しょうきん)
膝を曲げた時にできるふくらはぎの筋肉(腓腹筋)のなかで一番大きな部分の中心に位置します。
こむら返りや腰痛、特に坐骨神経痛などに効果のあるツボです。
<h3【痛みを和らげるツボ】承山(しょうざん)
アキレス腱の少し上、さきほどの承筋の少し下に位置するツボで、腰や背中の痛み、こむら返りなどに効果のあるツボです。
承筋と場所が似ているため、効果も若干似ているところがあります。
【痛みを和らげるツボ】陽陵泉〈ようりょうせん)
膝の外側にある腓骨頭という骨付近にあるくぼみに位置します。
筋肉と関連があり、筋肉の痙攣に効果があります。
また腰から下、下肢痛、膝の痛みにも効き、意外なところでは片頭痛にも効果があります。
【痛みを和らげるツボ】湧泉(ゆうせん)
足の親指の根元付近で、指を曲げるとできるくぼみ付近に存在します。
足の筋肉に対する疲労や、冷えを改善させる効果があるので、ふくらはぎのみならず全身の疲労回復に効果的です。
【痛みを和らげるツボ】委中(いちゅう)
膝裏の関節の中心部に位置するツボです。
足の痛みやしびれ、腰痛や膝などの痛みに効果があります。
ツボはただ押せばいいというわけではなく、1回に10秒から数十秒のペースでじっくりと力を加えていきましょう。
その際人差し指や親指でじわじわと力を加えていきます。あたためながらやっても効果的です。
こむら返りにはどっちの湿布を貼る?(温湿布or冷湿布)
体のどこかに痛みが生じている場合、痛みを鎮める方法の1つとして痛み止めの湿布を貼る方法があります。
こむら返りによって痛みが生じている場合、湿布を貼ることは有効なのかを解説します。
湿布にはひんやりとした冷湿布と患部を温める温湿布の2タイプがあります。
一般的に冷湿布は急性の症状に対して用います。
打撲や捻挫など赤く腫れたり熱を持っている場合の最初の5日間ほどに有効的です。
患部を冷やすことで血管をギュッと収縮させ、炎症を抑える効果があります。
一方で、患部を温める温湿布は腰痛や、肩こり、関節痛などの慢性的な症状に対して有効です。
温めることで血管が拡張し血流がよくなります。
その結果、凝りや痛みが軽減するというメカニズムになります。
こむら返りは筋肉のけいれんが起きている状態なので、炎症を抑える効果のある痛み止めの貼り薬は直接的に効果は発揮できないかもしれません。
こむら返りが起きた原因が冷えによる血行不良の場合は、冷湿布の使用は逆効果になるので使用を控えた方がいいです。
痛みを抑えるには前述した漢方薬の「芍薬甘草湯」が効果的です。
ポイント
こむら返りの原因が冷えによる血行不良の場合は、令湿布は控えましょう。
【こむら返り】こむら返りを予防する方法
こむら返りという症状はミネラル不足や水分不足、筋肉の疲労やまた、血行不良などによって引き起こされてしまうことを説明しました。
日常の生活の中では、生活習慣を改めてみると予防につながる点がいくつも存在します。
痛みは激痛を伴うこともありますので、事前にできる対策について説明します。
【こむら返りの予防方法】水分やミネラル分を補給する!
こむら返りの原因になっているミネラル不足、水分不足を補うことで、予防をします。
運動中はたくさんの汗をかくのでスポーツドリンクをこまめに摂取することが重要です。
また、睡眠中にもコップ1〜2杯分の寝汗をかいているので、就寝前に水分を摂取しておくことも夜間のこむら返りの予防につながります。
【こむら返りの予防方法】体を冷やさないようにする!
体を冷やすことも筋肉の痙攣を起こし、こむら返りになるきっかけを作ります。
過度に冷房にあたったり、素足や就寝時の半袖半ズボンを避けるなど体を冷やしすぎない配慮が必要です。
また、入浴時にはシャワーだけでさっと済ませるのではなく、湯船に浸かってじっくりと芯まで温めることもこむら返りの予防になります。
プラスで温まった後にマッサージをするとさらに血行が良くなるため効果的です。
【こむら返りの予防方法】掛け布団の重さを重くしすぎない!
就寝時にこむら返りが多い理由の1つにつま先が伸びきっていることがあります。
就寝時はつま先が伸びた状態になりますが、同時にふくらはぎが収縮している状態になります。
重い布団をかけて負荷がかかると、つま先が伸びきった状態になるのでこむら返りが起こりやすくなります。
就寝時は重すぎない掛け布団を使うようにしましょう。
【こむら返りの予防方法】合間にストレッチを加える!
仕事によっては長時間立ちっぱなしの方や同じ姿勢の方もいると思います。
長時間筋肉が同じ状態で維持されると疲労物質が溜まっていき、けいれんが起きやすくなります。
ストレッチをすると筋肉が伸縮されるので筋肉がほぐれ、けいれんのリスクも低下します。
特に女性はハイヒールを長時間履く場合も筋肉に負荷がかかるので、定期的に靴を脱ぎ、屈伸などの運動をしてあげるといいです。
日常的にこむら返りになるなら病院へ行こう!
今回は、高齢者のみならず若年者や、中高年の方も1度は経験したことがあるであろう「こむら返り」の症状や、メカニズム、対策方法、予防方法について解説しました。
- こむら返りの原因はミネラル不足・水分不足・筋肉疲労・血行不良が挙げられる。
- こむら返りの痛みを和らげるツボがある
- こむら返りには、筋肉の痙攣に効果的な「芍薬甘草湯」という漢方薬がある。
こむら返りは、発生すると強い痛みが生じ、夜間の場合は睡眠が妨げられ、睡眠状況に影響を及ぼしかねません。
年代問わず発生する可能性はありますが、中高年以上で発生のリスクは数段と高くなっています。
日常的にこむら返りになる場合は、一度受診してみることをお勧めします。
発生する原因がわかれば予防することも可能です。
これから冬季に入り冷え込みが進むと発生する頻度は多くなっていきますので事前に対策を取れることは積極的に取り組みましょう。