「熱っぽいから風邪かな?」と、微熱や咳が出ると風邪と決めつける方は多いのではないでしょうか?
夏風邪の大部分はウイルス感染が原因で発症するケースが多く、一度かかると長引く夏風邪は、冬の風邪と違う性質や特徴を持っています。
冬の風邪と同じ予防や対処方法をしても効果がなく、逆にこじらせて別の病気を引き起こすこともあります。
夏と冬に活発化するウイルスの特徴や感染経路を把握して、夏風邪にかからないための予防対策や対処方法を正しく理解する必要があります。
そこで今回は、夏風邪にかかっても軽症で治るために種類や特徴、夏風邪の予防対策や対処方法についてご紹介します。
【夏風邪の特徴】夏風邪と冬の風邪の違いは?
風邪と聞くと、冬にかかる病気というイメージはありませんか?
夏にかかる風邪もあり、冬の風邪に比べるとなかなか治らないのが特徴です。
夏風邪と冬の風邪は、温度と湿度によって活性化するウイルスの種類が違い、その性質や特徴が異なります。
冬の風邪ウイルスは、低温で乾燥した環境を好み、多くが飛沫感染により感染します。
低温で乾燥した環境は、RSウイルスやインフルエンザウイルスが活動的になり、主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、発熱です。
また、夏風邪のウイルスは、高温多湿の環境を好み、飛沫感染より接触感染や、経口感染で感染することが多くなります。
高温で湿度の高い環境では、エンテロウイルスやアデノウイルスが活動的になり、主な症状は、発熱、腹痛、下痢、のどの痛みなどです。
インフルエンザが夏場流行しない理由は、暖かくなるとウイルスの力が弱まり、感染する力がなくなるからです。
しかし、冷房の効いた環境は冬の環境と類似し、低温で乾燥した室内ではインフルエンザが活動的になりますので、こまめな換気や加湿をすることで感染を予防できます。
ウイルスは、自分で増殖できず、人間の鼻やのどの粘膜の細胞に侵入し、感染した細胞にウイルスの仲間を増やしてもらおうとします。
人間の体は感染した細胞を丸ごと攻撃しますので、くしゃみや鼻水、たんや咳でウイルスを追い出そうとするので、風邪のような症状があらわれます。
【夏風邪の種類】夏風邪の種類を知ろう!
夏風邪の代表的なウイルス、エンテロウイルスやアデノウイルスは高温多湿の環境を好み、発熱、腹痛、下痢、のどの痛みが症状として表れます。
そして、それぞれのウイルスの中には数百の種類に分かれますので、一度感染しても何度も感染する可能性があります。
夏風邪の代表的なウイルス、エンテロウイルスとアデノウイルスとはどのような特徴があるかご紹介します。
【夏風邪】エンテロウイルス
エンテロウイルスは腸管で繁殖するウイルスの総称で、ヘルパンギーナや手足口病など、60種類を超える型を持ち年毎に流行する型が異なります。
【ヘルパンギーナ】
子どもがひく夏風邪の代表ウイルスで、突然の38℃を超える発熱、のどの痛み、皮膚が赤くなったり、水ぶくれができたりします。
食べ物やの飲み物が、のどを通らなくなるほど痛みを感じることもあります。
ウイルスの排出期間は2~4週間と長期にわたりますが、登園・登校停止の義務はありません。
【手足口病】
夏季に流行し、口や手足に水ほう性の発疹があらわれますが、かゆみをともなうことはほぼありません。
熱が出ても37℃程度ですが、重症の場合は、高熱、嘔吐、頭痛の症状が表れます。
まれに、無菌性髄膜炎や脳炎、心筋炎や肺水腫など重篤な合併症が起こる場合もあります。
潜伏期間は3~6日間あり、熱が出た場合は1日~3日ほどでほとんどは下がります。
【夏風邪】アデノウイルス
アデノウイルスに感染した場合、あらわれる部位によって症状が異なり、感染力が強く、咳やくしゃみによる飛沫感染の他、手や皮膚からの接触感染などによる経口感染で簡単に感染が拡大します。
主に呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こすウイルスで、免疫力がつきにくく何回も感染します。
【咽頭結膜熱(プール熱)】
夏に流行する傾向が高い咽頭結膜熱(プール熱)は、38℃を超える高熱が約5日間続く場合があり、のどが痛く、結膜炎、下痢、腹痛をともなう場合があります。
耳や鼻にウイルスが侵入して、中耳炎や副鼻腔炎を起こしたり、まれに肺炎をおこして重症化したりします。
咽頭結膜熱(プール熱)は流行性が高いと考えられる第二種に分類され、出席停止期間が定められており、発熱やのどの痛み、結膜炎が3~5日間程続き、その後2日間は登園・登校ができなくなります。
咽頭結膜熱の他、呼吸器感染症や出血性膀胱炎、胃腸炎など、アデノウイルスによって起こる感染症はさまざまです。
夏風邪にかかっても、軽度~重症まで症状は分かれ、軽症の場合は冬の風邪のように、鼻汁、くしゃみ、咳、筋肉痛の症状だけあらわれます。
これらのウイルス感染に免疫力が少ない、幼児期から小学生期に多いことが夏風邪の特徴です。
【夏の風邪】夏風邪と勘違いされる病気
風邪の原因となるウイルスは400種類以上もありますが、どのウイルスも症状が出始めてから、2~3日目にピークを迎え、その後7~10日間で徐々に改善していきます。
2週間程、咳やくしゃみが続く可能性がありますが、咳が1ヶ月続く場合は、夏風邪の症状に類似した病気かもしれません。
【夏型過敏性肺炎(夏型肺炎)】
夏場に発症するアレルギー性の過敏性肺炎ことで、カビが原因となり発症します。
以前までは古い住宅で発生されてきたカビですが、近年の気密性の高い住宅では、新築でもカビの繁殖に適した環境となり、高温多湿、風通しの悪い場所に発生し、せきや発熱、息切れなどの症状が表れ、慢性化すると肺の機能が低下していきます。
軽いうちは外出すれば症状が治まり、自宅に戻ると症状が悪化する場合は夏型過敏性肺炎の疑いがあります。
【気管支喘息】
気管が炎症し、慢性的に腫れる症状を繰り返すのが特徴で、ゼーゼーと吸気性の呼吸音をともなう場合があります。
ダニやカビ、動物の毛、花粉、食物などが原因で発症し、初期症状はせき喘息の状態で、乾いたせきを繰り返します。
放置しても治ることはなく、せき喘息は数年のうちに3割が気管支喘息になる可能性があります。
重症化させないためには、家の中をこまめに掃除することが大切です。
このような場合は、夏風邪とは違い安静にしても簡単によくなる事はありませんので、所定の医療機関での治療が必要になります。
【夏の風邪】夏風邪の感染経路と予防対策
夏風邪のエンテロウイルスは、主にお腹(腸管)の中で増えますので、便にウイルスが大量に出て、手を介して口からうつるケースがほとんどです。
家庭内や幼稚園などの集団生活で、タオルの共有をせず、帰宅時やトイレ後、おむつ交換後に手洗いをすることでウイルス感染を予防できます。
治った後も、12ヶ月程ウイルスが便の中に排出されますので、その後も注意し、こまめに手洗いを心掛ける必要があります。
手洗いが面倒な場合、アルコール消毒ができるウェットティッシュで代用しがちですが、エンテロウイルスはアルコールが効きにくい体質を持っていますので、手洗いやうがいをしっかりと行うことが大切です。
そして、夏の屋外は高温多湿ですが、クーラーをつけた室内は乾燥してしまい、乾燥した鼻やのどの粘膜にある細胞にウイルスが付きやすくなります。
こまめな水分補給をすることで、鼻やのどの粘膜に潤いを与えウイルス感染を予防できます。
手足口病やヘルパンギーナに感染してしまった時は、口腔内が痛むので、鎮痛剤や粘膜保護剤の軟膏を処方されます。
食事は、刺激のあるものは避け、のど越しのいい少し冷たい飲み物が最適で、ゼリーやプリン、冷めたおかゆなどかまずに飲み込める食事を与えましょう。
咽頭結膜熱は、小学校のプール授業で感染することが多いのでプール熱とも呼ばれています。
潜伏期間が2日~14日、飛沫感染と接触感染が主な感染ルートです。
プールから上がった後はシャワーを浴び、目を洗い、うがいをすることで感染を防げます。
実は、プール熱と呼ばれていますが、プールに関係ないところでも感染し、感染力が非常に強い性質があります。
ウイルスが付着した手指や物、食品が口や鼻から体内に入ることで感染します。
アデノウイルスは熱に弱く、タオルを洗濯する場合は、熱水で洗濯すれば消毒できますし、次亜塩素酸ナトリウムでも消毒可能です。
アデノウイルスは環境で10日間以上生き残ることがあるので、ドアノブやスイッチなど感染者が触れた可能性のある場所は消毒用エタノールで二度拭きすると消滅します。
咽頭結膜熱にかかってしまった場合はのどの痛みにはうがいや鎮痛薬を使い、目やにや結膜炎には抗生剤やステロイドの点眼薬が処方されます。
のどの痛みがあるので、手足口病やヘルパンギーナと同じ食事を摂るようにしましょう。
いずれも、夏風邪は脱水症状を起こしやすいので、水分補給をこまめにしましょう。
【夏の風邪】大人も夏風邪に感染するの?
夏風邪のほとんどは、子どもが感染するウイルスですが、免疫力が低下していると、大人でも感染することもあります。
まれに子どもから感染して、大人も発症しますので、身近な子どもが感染した場合は注意が必要です。
ヘルパンギーナに大人が感染し、重症化した場合は、脳炎や髄膜炎、心筋炎などの疾病を誘発することがあります。
感染ルートは、子どもの食べ残しを食べたり、食器やタオルから接触感染したり、咳やくしゃみなどから飛沫感染することもあります。
また手足口病に子どもが感染した場合は、ほとんどが軽い症状ですみますが、大人が感染した場合は、手や足、口の中に痛みを感じ、高熱を発し寝込むこともあります。
大人の場合は子どもと異なり、仕事など強制的に休まなければならない制限はありませんが、自分の体調や周囲へ感染させる可能性を考慮し、症状がなくなるまで安静に過ごすことが勧められます。
夏風邪にならないために対策する方法
ウイルス感染には、抗生物質が効かないので、症状を緩和する薬(解熱剤や咳止めなど)を飲み、自分の免疫力で治療する以外手立てがありません。
炎天下の運動や外出による疲労や、寝苦しい熱帯夜のせいで睡眠不足、暑さのせいで食欲不振などが続くと免疫力が急速に低下します。
免疫力が低下すると、免疫細胞の働きが弱まり、ウイルスを撃退するための戦いが長引きます。
完治するまでに時間がかかりすぎると、肺炎や副鼻腔炎など、細菌感染がおきることがあります。
夏風邪を長引かせないために、普段の生活の中で少し気を付けるだけで免疫力をアップできます。
【夏風邪の対策】免疫力アップする!
【適度な運動する】
低体温では免疫細胞の活性化を低下させるので、適度な運動で体を温めましょう。
特にお腹を温めることで、免疫力を高めるリンパ球が増加します。
激しすぎる運動は、逆に免疫力を低下させますので、軽く汗をかく程度の運動量をできるだけ毎日続けましょう。
【適度な睡眠を取る】
睡眠は、免疫力を高めるための重要な役割を担い、睡眠中に免疫力を維持し強化されています。
また、夜の神経である副交感神経は、心身共にリラックスさせる効果があり、日ごろ感じるストレスを発散させ、自律神経を整えます。
また、睡眠中にホルモンが分泌され、痛んだ細胞の修復や疲労回復をします。
【栄養バランスのとれた食事をする】
腸は、食べ物を消化・吸収する場所ですが、食べ物と一緒にウイルスや病原菌が侵入する場所でもあります。
病原菌の侵入を阻止するため、体全体の免疫細胞の役7割は腸に集まっているため、腸内環境を整えることで、免疫力を向上させます。
規則正しく食事を摂り、発酵食品や食物繊維、オリゴ糖で腸内細菌を改善し、タンパク質で細胞の働きを整えます。
さらに、ビタミン類、ミネラル類、コレステロールで免疫細胞を強化し、ウイルス感染を予防します。
夏風邪に負けない体力づくりをしよう!
今回は、夏風邪にかかっても軽症で治るために種類や特徴、夏風邪の予防対策や対処方法についてご紹介しました。
- 夏風邪のウイルスは、まだ抵抗力が少ない子どもが感染することが多く、そのほとんどが接触感染や経口感染で感染する
- 軽症の場合は、風邪の症状に類似したせきやのどの痛みなどが表れますが、人から人に感染するウイルスで子どもを介して免疫力が低下した大人にもまれに感染する可能性がある
- 感染の予防策は、手洗いとうがいを頻繁におこなうことと、タオルなどを共有しないことで感染を防げる
- 夏風邪のウイルスに効果的な薬や予防注射はなく、ウイルスの型がいくつもあり、一度かかっても何度もウイルス感染する可能性がある
- 治療に薬がないため、安静にし、自分の免疫力がウイルスに打ち勝つのを待つ以外方法はありません
夏バテという言葉がありますが、夏は普通に生活をするだけでも暑さで体調を壊すことがあります。
体調を壊してしまうと、免疫力が下がり、ウイルスの侵入を阻止できなくなります。
夏風邪の予防は、夏を越すための体調管理にも役立ちます、ぜひご紹介しました「普段の生活の中で少し気を付けるだけで免疫力アップ!」のポイントを続けておこなってください。