短時間睡眠に必要な事は?無理して短時間睡眠するのはやめましょう!
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。
短時間睡眠は、限られた時間を有効に使いたい人には最適な方法ですが、ショートスリーパーになりたいからと睡眠時間を削ってしまった場合は、体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
短時間睡眠が可能なショートスリーパーの人たちの中には、無理をして睡眠時間を短くしているわけではなく、特異な遺伝子を持っている人がいるともいわれています。
日本は「睡眠不足大国」と言われています。
無理して短時間睡眠を目指すのではなく、質の高い睡眠を目指してみませんか?
この記事の目次
短時間睡眠(ショートスリーパー)とは?
現代の日本人は仕事などでとても忙しく、この半世紀で睡眠時間が少しずつ減ってきているとの調査報告もあります。
寝る時間がなかなか確保できず、毎日の睡眠時間が5時間以下になってしまう人も多いのではないでしょうか?
また、残業や付き合いなどで寝不足になり、昼寝をしたり食後にデスクでウトウトしたり、休日は昼過ぎまで寝ているという人も少なくないはずです。
短時間睡眠=ショートスリーパーとは、上記のようになんらかの問題があって睡眠時間が短くなっている人のことではなく、4~6時間、あるいはそれ以下の睡眠時間でも健康的な生活を送れる人のことをいいます。
中には毎日1~2時間しか寝ないというショートスリーパーもいて、そのような人たちは1日に22~23時間は仕事や家事、趣味の時間に充てられるということになります。
このように1日の睡眠時間が1時間や4時間しかなくても、日中に睡魔に襲われることなく、休日に寝だめすることもなく、短時間睡眠が続いても睡眠不足だと感じない人こそ「真のショートスリーパー」だといえます。
1日の中で活動できる時間が5~6時間多くなれば、少し遠くまで出かけたり、長編映画を見たり小説を1冊読み切ることもできます。
このような時間の使い方をすることは理想的なことですが、誰にでもできることではありません。
最近では、元フジテレビアナウンサーの笠井信輔さんがショートスリーパーだと報道されていましたが、日中にウトウトしていることや、話している最中に寝ていることもあったようですので、時間を有効に使うためにあえて短時間睡眠をしていたのかもしれませんね。
短時間睡眠によって時間を有効活用できることはとても素晴らしいことですが、体と相談しながら無理のない程度にして、しっかりと睡眠をコントロールすることが、1番自分のためになるのではないでしょうか?
短時間睡眠が可能なショートスリーパーは遺伝なの?
短時間睡眠は自分でコントロールするものだとされており、自分の意思でできるものだと考えられていました。
短時間睡眠が可能なショートスリーパーは、遺伝子とは無関係であると考えられていましたが、最近の研究で「DEC2」や「β-1アドレナリン受容体遺伝子(ADRB1)」といった遺伝子の突然変異が関係していることがわかっています。
働きすぎともいわれる私たち日本人は「毎日3時間しか寝ていない」「平均5時間しか寝ていない」という人は結構多いです。
しかし、先ほどお話しした「真のショートスリーパー」とは特異な遺伝子を持っている人のことで、人口10万人に4人程の割合でしか存在しないといわれています。
また、同じ遺伝子を持った家族が3世代揃ってショートスリーパーであったことや、家族の中でもこの遺伝子を持たない人はショートスリーパーではなかったことなどから、短時間睡眠には遺伝子が関係しており、家族間での遺伝も関係しているといえます。
この特異な遺伝子を持っている人は、極端に睡眠時間が少ない場合でも体に影響を及ぼすことなく健康的な生活を送れるのですが、遺伝子を持たない人が短時間睡眠の生活を続けると、認知症やがん、心疾患のリスクが高くなるといわれているので注意が必要です。
仮に遺伝子を持たない人が短時間睡眠を続けられたとしても、病気になるリスクが全くないとは言い切れず、何かしらの不調が出る可能性も高いです。
有名なところではエジソンやドナルド・トランプがショートスリーパーとして知られていますが、エジソンは84歳まで長生きしました。
また、ドナルド・トランプも現時点で73歳ですが元気に活躍されています。
驚くことにドナルド・トランプは毎日1時間程度しか睡眠をとらないともいわれており、このような方たちは特異な遺伝子を持った「真のショートスリーパー」なのかもしれませんね。
短時間睡眠に睡眠の質や睡眠サイクルは関係ないの?
睡眠には種類があり、眠りはまずノンレム睡眠から始まります。
その後レム睡眠へと移行して、またノンレム睡眠に戻るといったように繰り返されます。
多くの人は睡眠の2割がレム睡眠で8割がノンレム睡眠といわれていますが、この「レム睡眠」「ノンレム睡眠」とは一体何なのでしょうか?
【レム睡眠】体(骨格筋)はリラックスしていても脳が覚醒している状態のことをいいます。急速眼球運動を伴う睡眠状態であり、瞼の下で眼球がキョロキョロと動いています。
夢を見たり金縛りにあったりするのは、このレム睡眠中である事が多いとされており、脳だけが覚醒し情報処理や記憶の定着をしています。
【ノンレム睡眠】
急速眼球運動(レム)のない睡眠状態のことをいいます。
脳の代謝量は低下し、脳も体もリラックスしている状態で、疲労回復、組織の修復、細胞の産生など、大切な役割を多く担っています。
また、深い眠りに入ると成長ホルモンが分泌されるといわれており、人間にとって欠かせない睡眠であるといえます。
「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の合計(1サイクル)は90分であり、このサイクルを睡眠中に数回繰り返しているといわれてきましたが、最近ではこのサイクルには個人差や体調の影響が大きいことがわかっています。
1サイクル80分の人もいれば100分の人もいるため「必ず90分サイクルで寝ると良い」とは一概には言えません。
では、短時間睡眠が可能なショートスリーパーの人の睡眠サイクルはどのようなものになっているのでしょうか?
実はショートスリーパーの人たちは、脳が覚醒している「レム睡眠」に比べて、疲労回復や組織の修復に欠かせない「ノンレム睡眠」のほうが長いという調査結果が出ています。
このように、真のショートスリーパーの人たちは無意識のうちに質の高い睡眠がとれているわけですが、質の高い睡眠がとれているから短時間睡眠が可能になっているというわけではありません。
ショートスリーパーの遺伝子を持っているからこそ質の高い睡眠が取れており、短時間睡眠でも健康的な生活を送ることが可能になるのです。
どうしても短時間睡眠になる場合は睡眠のコツを試そう!
どうしても「短時間しか睡眠時間が確保できない!」という場合も、睡眠の質については考えましょう。
ショートスリーパーを目指して質の高い睡眠をとるのではなく、自分のために質の高い睡眠をとって、体を大切にすることが1番です。
短時間睡眠は、ショートスリーパー体質でない限り、体調不良になったり病気のリスクが高くなったりすることがあるため、あまりおすすめできません。
しかし、仕事や家事、育児などに追われて睡眠時間が確保できないという場合もありますよね。
このような場合は、時間があいた時や休日に寝だめをしたくなる時があるものです。
寝だめをすることによって失った睡眠時間を一気に取り戻せるような気がすると思いますが、実は寝だめをしても睡眠不足は解消しないといわれています。
寝だめをすることで失った睡眠時間を相殺しようとせずに、睡眠の質を高めることが重要なポイントになります。
質の高い睡眠をとるための4つのコツを紹介します。
【短時間睡眠のコツ】寝だめをしない
寝だめをしても睡眠不足は解消できず、体内時計が乱れ、就寝時間になっても寝つけないことがあります。
休日でも、普段より1~2時間多く寝る程度に抑えておきましょう。
【短時間睡眠のコツ】就寝1時間半前に入浴して体を温める
人間は、一度上がった体温が下がる時に眠くなります。
就寝の1時間半前に入浴することで、布団に入る時にちょうど体温が下がり始め、寝つきがよくなります。
【短時間睡眠のコツ】寝る前にスマホをいじらない
スマホのブルーライトには覚醒効果があるため、就寝前にスマホをいじることで脳が覚醒し、寝付きが悪くなります。
寝る前にどうしても使いたい場合は、ブルーライトカットの設定をしましょう。
【短時間睡眠のコツ】就寝3時間前までに夕食をすませる
遅い時間に食事をして、その後すぐに寝ることもあると思います。
しかし、食後にすぐに就寝すると、寝ている最中に消化活動をすることになります。
消化活動は思っているより体力が必要ですので、就寝3時間前までに食事を終えておくことが理想的です。
生活のリズムを整え体に良い環境を作ることで、同じ睡眠時間でも質の高い睡眠をとれるようになります。
良質な睡眠で体をしっかり回復させてあげましょう。
睡眠不足の定義とは?短時間睡眠が続くとどうなるの?
ちょうどいい睡眠時間というのは人それぞれで、個人差が大きいのが実情です。
4時間寝れば1日すっきりと過ごせる人もいれば、10時間寝ても日中に眠たくなる人もいます。
一概に睡眠不足と言っても「〇時間だから睡眠不足」とは言えません。
個人差がある「睡眠に必要な時間」ですが、睡眠不足が続けば必ずと言っていいほど体調不良に陥ります。
精神的にも肉体的にも様々な影響があり、それによりさらに寝つきが悪くなったり睡眠の質が悪くなったりするため、悪循環のループにおちいります。
睡眠不足であることに早い段階で気づき、対処する必要があります。
【睡眠不足のサイン】集中力が低下する
睡眠不足になると認知機能の低下から情報処理がうまくできなくなり、仕事でのミスが増えたり、いつもならばできることに集中できなくなったりします。
【睡眠不足のサイン】日中に疲れや眠気を感じる
通勤中や午前中などあまり動いていない時間帯に疲れや眠気を感じる場合は、心身ともに十分な休息が取れていない可能性が高いです。
【睡眠不足のサイン】頭痛やめまいがある
睡眠不足になると脳が酸欠状態になり、頭痛を引き起こすことがあります。
また、自律神経のバランスが乱れ、めまいを起こす原因にもなります。
【睡眠不足のサイン】肌荒れ
睡眠不足になると新陳代謝が悪くなるため、肌の代謝も悪くなり、肌質が悪くなります。
このようなサインに早く気付き、深刻な睡眠不足にならないように心がけましょう。
短時間睡眠を続けている人にはきっとこのようなサインが現れているはずです。
短時間睡眠で寝不足感がある!最適な睡眠時間は?
日本人の平均睡眠時間は6~7時間で、睡眠時間が6時間を下回ると「寝不足」だと感じる人が多いとされています。
アメリカの調査では、睡眠時間が7時間の人が最も寿命が長いという結果も出ています。
7時間を下回ると寿命が短くり、7時間を超えるとさらに短くなるというから驚きです。
人間の睡眠サイクルには個人差があり、80分の人もいれば100分の人もいると紹介しましたが、大体の人はこのサイクルを4~6回繰り返し、7時間ほどの睡眠で自然に目が覚めるようになっています。
自分の睡眠サイクルを確かめるのは難しいですが、これを掴めれば良質な睡眠を確保できます。
最近では睡眠サイクルを記録してくれるスマホのアプリも多くあるので、一度試してみるのもいいかもしれません。
自分の睡眠サイクルがどのようになっているのかがわかれば、自分は何時に寝て何時に起きるのがベストなのかということもわかり、生活のリズムを整える手助けにもなります。
短時間睡眠でも過剰睡眠でも、どちらも病気になるリスクが高くなり、寿命も短くなるわけですから、自分の睡眠サイクルに合わせた7時間程度の睡眠時間で、生活そのものをコントロールすることが最適だといえます。
短時間睡眠ではなく質の高い睡眠で快適な1日にしよう!
今回は、短時間睡眠や睡眠の質について紹介しました。
短時間睡眠が可能なショートスリーパーに憧れる人は多いと思いますが、人にはそれぞれ自分に合った睡眠サイクルがあるため、無理は禁物です。
睡眠の質や睡眠サイクルをしっかり理解し、間違った方法で体を壊さないように気を付けてくださいね。
- 短時間睡眠でも健康な生活ができる人は、特異な遺伝子を持っている
- 短時間睡眠しかとれない場合は、質の高い睡眠をとるように心がける
- 無理な短時間睡眠は睡眠不足を招き、病気を引き起こす
- 最適な睡眠時間は約7時間です
睡眠サイクル・生活のリズムを整えて、快適な生活を送りましょう。
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
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