一酸化窒素は柔軟な血管を作る!一酸化窒素の生成を増やし健康な生活をおくろう
大気汚染などの原因といわれる「一酸化窒素」ですが、体内では重要な役割をもつ物質であることをご存知でしたか?
一酸化窒素には心臓から送り出された血液を各所に運ぶ重要な血管に柔軟性を持たせるという大切な役目があります。
この記事では一酸化窒素の生成を保ち健康な生活を送る方法をご紹介いたします。
この記事の目次
体内で生成される「一酸化窒素(NO)」とは?
空気中に存在する窒素と酸素が結合した「一酸化窒素」は燃焼ガスや排気ガスなどに含まれていて、変化したのちに高化学スモッグや大気汚染の原因となるため、みんなから嫌われている物質です。
しかし体内で自然に生成される一酸化窒素は、排気ガスに含まれる人工的につくられた一酸化炭素とは違い身体の中で重要な役割を担っている健康を維持するための好まれる物質なのです。
一酸化窒素が体内でどんなシステムで働き、健康な身体を維持するのに役立っているのか、一酸化窒素の量が減ると身体にどんな悪影響が出るのかをご説明してまいります。
一酸化窒素が減ると血管が固くなり病気のリスクが高くなる
みなさんは「動脈硬化」という病気の名前を聞いたことがあると思います。
「動脈」は心臓から送り出される血液を身体の各所に送る血管であり、「静脈」は反対に身体の各所から使用後の血液を心臓に送り届ける血管です。
動脈硬化は、心臓から送り出される新鮮な血液を送る大事な血管が硬くなってしまうことです。
血液の流れは一定でなく、立ち上がったり運動をすると血流が増え、睡眠中などは安定したゆっくりとした血流です。
このように血液の流れの変化に対応するためには、柔軟性のある血管が必要なのです。
血管が硬くなると血液の中にあるコレステロールなどの脂分が血管に吸着して血管を細くして血の流れを悪くしてしまいます。
また血管自体が弱くなってしまい、壊れやすくもなります。
動脈硬化が進行すると、日本人に多い病気である「狭心症」や「心筋梗塞」などの病気や、「脳卒中」などの脳内の重大な血管の病気になることも多くあり、突き詰めると体内で作られる一酸化窒素が減ることにより血管に柔軟性がなくなることから発症することが多いと考えられているのです。
血管を柔らかくする一酸化窒素
血管を柔らかくする一酸化窒素は身体の中でつくられます。
その体内でつくられた一酸化窒素は、心臓から運ばれる新しい血液の道である動脈に影響を与えます。
動脈は3層構造になっていて、血液が直接流れる内膜とそれを包む中膜と最も外側にある外膜で構成されています。
真ん中にある中膜には平滑筋という筋肉の繊維があり、この平滑筋によって血管は血流の流れによって柔軟に伸縮するようになっています。
ところがこの平滑筋が硬くなってしまい、柔軟に伸縮しないようになると、血液の流れが悪くなります。
これが、いわゆる動脈硬化のはじまりです。
一酸化窒素はこの平滑筋に作用して、筋肉の緊張をほぐし柔軟性のある血管をつくります。
つまり一酸化窒素の生成が増えることで、柔らかい血管をつくることができます。
この一酸化窒素を平滑筋に送るため生成の指令を出すのは最も内側にある内膜です。
ですから内膜が機能しなければ一酸化窒素は生成されず、結果的に血管は硬くなってしまいます。
この重要な役割を果たす内膜に障害を与えるといわれるのが「喫煙」と「高血圧」です。
詳しい説明は省きますが、血管を健康に保つには、喫煙は避けるべきであり高血圧になる前に予防をしなければいけません。
ところで一酸化窒素が体内で多く生成されれば柔らかい健康な血管が維持できるということですが、どうすれば一酸化窒素のつくられる量を増やせるのでしょうか。
一酸化窒素は血流が多くなることに反応して、生成される一酸化窒素が増えて血流が少なくなれば一酸化窒素の生成は減少することが分かっています。
簡単に言えば、血流を増やせば一酸化窒素の生成は増えて柔軟な血管を手に入れられるのです。
おさらいしておきますが、一酸化窒素の生成量が減ると血管は硬くなり血液の流れが悪くなります。
血液の流れが悪いということは血流が減ることになりますから、一酸化窒素の生成が減って更に血管が硬くなり悪循環を繰り返すようになります。
こうならないように血流を増やして健康な血管を保つような努力が必要になります。
どのような努力をすれば健康な血管を維持できるのか、まずは血管が弱くなる仕組みからご説明し、効果的な取り組み方をご紹介してまいります。
加齢とともに生成量が減る一酸化窒素
血流は運動をすることで増えます。
年齢を重ねて運動量が減れば血流も悪くなり血管は硬くなっていきます。
また普通の筋肉と同じように血管の筋肉も年齢とともに柔軟性がなくなり、一酸化窒素の生成量も減っていくので血管の老化、つまり血管が弱くなっていきます。
30歳以上になると血液中のコレステロールが増えることが多く、一酸化窒素の生成を指示するはずの内膜に余計な脂分が付着してしまい、内膜の細胞が上手く機能しなくなります。
これらが加齢により一酸化窒素の生成量が減って血管が硬くなってしまう原因の一部分です。
このまま放置しておけば、前述のように悪循環が続き最悪の場合には動脈硬化をおこして心臓病や重大な血管の病気となります。
血管が硬くなる前に、しかりとした予防法をとっておきましょう。
一酸化窒素の生成量を維持する適度な運動
一酸化窒素は血流が多くなることで生成量も増えるということはご説明いたしました。
そして運動をすることで血流が多くなることも既にお話ししています。
つまり運動をすることで一酸化窒素の生成を促し、健康な血管を維持できるのです。
ではどのような運動が良いのか、具体的な運動方法をご紹介いたします。
- 階段の上り下り(踏み台をつくって上がって降りるのを繰り返すだけでもよい)
- 軽いジョギングや散歩(足を使って歩く)
- 手を強く握ったあとに緩める動作を繰り返す
- 軽い腹筋を何度かして休む、という動作を繰り返す
- つま先で立って2~3秒したら全身の力を抜く動作を繰り返す
5つの運動法をご紹介いたしました。
運動とまでいえないものもあります。
筋肉をほどほどに使い緩める動作をすることが大事です。
時間的には1日数分で結構ですし、回数も10回から20回程度でも十分です。
ただし、毎日行うようにしてください。
短い時間で良いので、毎日繰り返して継続して行うことが重要です。
また、激しい運動は逆に心臓や血管に負担をかけることになるのでひかえてください。
5つの運動のように無理なく簡単にできるもので十分です。
これらの運動は歩きながら同時に行えるものや、お風呂に入りながらできるものもあります。
身体と心に負担をかけないようにおこなってください。
特におすすめしたいのは、第2の心臓と呼ばれる「ふくらはぎ」の筋肉をつかった運動です。
つま先立ちして降ろすという簡単な繰り返しでも良い運動になります。
ウォーキングや軽いジョギングも、ふくらはぎの筋肉を使います。
運動する際にも「ふくらはぎの筋肉」や「腹筋」を使うことを意識して、筋肉を使ったあとに力を抜くことを意識して行いましょう。
豆知識『海女(あま)の人たちは血管年齢が若い!』
余談になりますが、海の深くまで潜り魚介類を採る「海女・あま」の人達の血管年齢が若いことは有名です。
長い時間を素潜りして漁をすることから、心肺機能が強いので当然だと思うかもしれません。
しかし理由は別なところにあります。海は深くなるほど水圧が高くなり身体にかかる圧力も大きくなります。
当然ですが血管にかかる圧力も強くなり平滑筋を直接刺激します。
加えて血管に圧力がかかるため血流に変化があらわれます。
そして水から上がったときには圧力から解放され血管は広がって血流が増えることになるのです。
これらを何度も繰り返すことで一酸化窒素の生成が増えます。
また平滑筋に直接作用することも影響して、ダブルで柔軟な血管をつくる状況ができるのです。
このように水の中の運動ということも体内の一酸化窒素を増やすのに良い方法といえます。
プールで泳いだり、プールの中を歩行するのも良いでしょう。
水の中では身体に負荷がかかりにくいので、ケガをせずに運動できます。
また運動ではありませんが、入浴も血流を良くします。
できれば熱いお風呂ではなく、身体に負担のかからない「ぬるま湯での半身浴」がおすすめです。
半身浴をゆっくりとしながら、手を握ったり開いたりの「グッパー運動」や、お腹に力を入れたり緩めたりの運動もすれば、相乗効果も期待できます。
リラックスして楽しみながら継続するようにしてみましょう。
一酸化窒素の生成量を維持する適切な食事
難しい専門用語が使われるため、体内での一酸化窒素の生成の過程については触れませんでした。
食餌療法やサプリメントの使用のため覚えておきたい用語があるので、ここで簡単にご説明いたします。
「アルギニン」という言葉をサプリメントなどの成分で聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
体内で一酸化窒素が生成される際にかかわる物質です。
アルギニンは化学式で書くと「C6H14N4O2」になります。
これは「C・炭素」が6つと「H・水素」が14と「N・窒素」が4つと「O・酸素」が2つ結合した物質という意味です。
一酸化窒素は「NO」ですから、アルギニンの中に一酸化窒素の成分が含まれていることが分かります。
このアルギニンが体内ではシトルリン(化学式・C6H13N3O3)という物質に変化して、この時に一酸化窒素「NO」が生成されます。
シトルリンはまたアルギニンに変換されてこれを体内で繰り返して行われています。
少し難しいお話になりましたが、結論だけをいえば「アルギニン」を摂取することで一酸化窒素の生成を増やせるのです。
サプリメントの中には「アルギニン」を含んだものが多くあります。
「オルニチン」にも「アルギニン」が含有されています。
これらのサプリメントを採ることも1つの方法です。
一般の食事においても「アルギニン」を含む食材を採ることで一酸化窒素の生成を増やすことが可能です。
アルギニンを多く含む食材をご紹介いたします。
- 魚
- 赤肉
- 鶏肉
- 大豆や豆類
- ナッツ
これらのものには「アルギニン」が含まれる代表的な食材です。
また一酸化窒素は不安定な物質で、酸素と結合して二酸化窒素(NO2)に変化しようとします。
体内にある酸素(特に免疫機能の調整をおこなう「活性酸素」)と一酸化窒素は結合しようとして、結合すれば無益な二酸化窒素にかわってしまいます。
そこで「抗酸化物質」を食事により摂取することで、一酸化窒素を保護することが可能です。
抗酸化作用のある栄養素は、「ビタミンC」や「ビタミンE」、「ポリフェノール」などが代表的なものです。
まとめると「アルギニン」や「シトルリン」はタンパク質の一種ですので、たんぱく質の豊富な食事を採るとともに、抗酸化作用のある栄養素の入った食材も同時に摂取することで、2倍の効果が期待できます。
※サプリメントの他に、コレステロールを下げる効果のある薬や、血圧を下げる効果のある薬剤も体内の一酸化窒素の生成を増やすといわれています。
内皮に作用して一酸化窒素を増やす指令を出す手助けができるとされています。
ただし運動に比べると効き目は少なめで持続性も短くなります。
サプリメントや薬剤の服用を続けることで一酸化窒素を増やす方向に近づけることはできますが、食餌療法とともに補助的な方法だと考えた方が良いでしょう。
軽めの運動を小時間だけ継続することで、食事や薬剤およびサプリメントよりも大きな効果ができることを覚えておきましょう。
軽い運動を毎日続けて体内の一酸化窒素を増やし健康な血管を手に入れよう
ここまで体内の一酸化窒素の生成量を増やして健康な血管を手に入れる方法をご紹介してまいりました。
一酸化窒素がからだの中でどんな役割をするのか、一酸化窒素によりどんな効果が期待できるのかなど、要約すると以下のようなことになります。
- 健康な血管は健康なからだをつくる
- 健康な血管とは柔軟性のある柔らかい血管
- 柔軟性のある血管には「一酸化窒素」が必用
- 体内でつくられる「一酸化窒素」は加齢とともに減少する
- 喫煙は「一酸化窒素」の生成をさまたげて血管の劣化をまねく
- 体内で生成される一酸化窒素を増やすにためは適度な軽い運動とタンパク質の多い食事が効果的
丈夫な血管とは柔軟性のある血管で、その柔らかい血管をつくるのが「一酸化窒素」です。
ご紹介しました方法で加齢による血管の劣化を止めて、健康な血管を手に入れ健康で楽しい生活を送ってください!