何が違うの?ベジタリアンとビーガンの違いを徹底分析
健康食ブームが広まっていて「ビーガン」や「ベジタリアン」という言葉をよくききますが、両者の明確な違いは分かりますか。
ビーガンとベジタリアンは非常に似ているので良く理解できていない方も多くいらっしゃいます。
そこで、この記事ではビーガンとベジタリアンの違いを詳しく説明しながら、両者の特徴もご紹介します。
この記事の目次
ビーガンはベジタリアンを超える完全菜食主義!
ベジタリアンという言葉は知っていてもビーガンという言葉を知っている人は少ないかもしれません。
どちらも英国が発症の造語ですが、ビーガンはベジタリアンとい言葉を語源につくられた言葉で、ベジタリアンの方が古いことからもビーガンの認知度が低いのは頷けます。
しかし現在では健康食ブームから、ベジタリアンとともにビーガンも注目を集めています。
ただし双方の明確な違いや本来の意味を説明できる人は少ないでしょう。
そこで2つの違いを明確にご説明いたします。
まず2つの名前についてご紹介します。
「ベジタリアン(vegetarian)」とは「菜食主義者」と訳されることも多く、菜食の主になる野菜の「ベジタブル(vegetable)」に読みも綴りも似ていることから、ベジタブルが語源と思っている人が多いようです。
しかし本当はラテン語の「vegetus(ベジェトゥス)」が語源で、「健全な」「新鮮な」「活力のある」という意味を持っています。
つまり健康志向の食事を採って活力のある生活を目指すことが「菜食主義」であり、それを主張し実践する人達という意味を持ってつくられました。
現在では単に「菜食主義者」であり、動物性食品を採らず植物性食品のみで生活する人達と理解されています。
もう1つの「ビーガン(vegan)」は「ベジタリアン(vegetarian)」を語源として最初の「veg」と最後の「an」をくっつけた造語です。
このことからもビーガンの方が新しい言葉だということが分かります。
「ビーガン(vegan)」という言葉は1944年に英国においてビーガン協会が発足したときに創設者が命名したといわれています。
ビーガンは菜食主義でありながら卵や乳製品・ハチミツなども採らないのが特徴で、「純粋ベジタリアン」「完全菜食主義者」などといわれることもあります。
簡単にいえばビーガンは「菜食主義者・ベジタリアン」に含まれるもので、ベジタリアンというカテゴリーよりも小さなカテゴリーであり、より純粋で厳しい規制のある菜食主義者といえます。
ビーガンは食事だけでなく生活にも規制をともなう新しいライフスタイル
しかし「ビーガン(vegan)」という言葉は食事だけにとどまりません。
動物食品を避けることに加え、動物由来の製品を使わないことも主張する新しいライフスタイルです。
動物を加工してつくった毛皮や革製品の使用も拒みます。
この考え方および主義主張を「ビーガニズム」と呼び、単にビーガンと呼ぶ場合にはこのビーガニズムを根本に持つ人達のことをいいます。
ただし最近ではベジタリアンとビーガンが良く比較されるように、食事の方に注目が多く集まっています。
そこでライフスタイルまでは求めない、完全菜食主義の「ビーガン」のことを「ダイエタリービーガン」という言葉を使って区別しています。
「ダイエタリ―」とは「食の」とか「食事の」という意味があり、食事に限定したビーガンという意味です。
ビーガンという言葉が生まれた理由には「動物の商品化を否定すること」で、この考え方を「エシカル・ビーガニズム」といいます。
前述のように動物由来の食事を避けるとともに、動物製品を身につけたり更には動物実験や鶏卵を用いた薬やワクチン接種も拒むという徹底ぶりです。
「エシカル」とは「道徳」とか「倫理」という意味で、動物愛護の考え方に通じる主義主張といえるでしょう。
更には「エンバイロメンタル・ビーガニズム」という言葉もあり、これは畜産業が持続可能な生活領域を破壊しているという考えを持ち畜産業全体を否定する考え方です。
ビーガン協会では以下のように「ビーガン」を定義しています。
「Veganisimとは、可能な限り食べ物・衣服・その他の目的のために、あらゆる形態への残虐行為、動物の搾取を取り入れないようにする生き方」
このように「ベジタリアン」とは単に食事に関する用語であるのに対し、「ビーガン」には食事のみの用語と動物愛護の考え方およびエンバイロメンタルという環境維持の考え方までを含む3つの意味を持つ言葉です。
ビーガンとベジタリアンは似て非なるもの!!!
食事に重点をおいて2つを比べれば非常に似ていることはご説明した通りです。
似てはいるものの、ビーガンはベジタリアンに含まれるものでベジタリアンの種類の1つだといえます。
しかし根本の考え方が大きく異なります。
ベジタリアンが「健康」に重点をおいているのに対し、ビーガンは「動物との関わり」に重点をおいています。
ビーガンは「動物愛護」の観点から菜食主義にいたる2次的なベジタリアンともいえるでしょう。
注目されている健康食としては「菜食主義」と「完全菜食主義」の差であり、似かよっていると考えることもできますが、個々が健康になろうとするベジタリアンの考え方と、動物の命を守り環境維持をはかろうというビーガンの主張は全く別のものです。
部分的には似ていますが、全く別ものといえるでしょう。
最近日本でも注目されはじめたビーガンやベジタリアン
ベジタリアンには肉類でも鶏肉は大丈夫とか魚だけは食べてもよいというライトなベジタリアンから、ビーガンのように完全菜食主義のベジタリアンまで様々です。
この禁食の文化は宗教が関わっているのは事実です。
日本においても仏教が盛んになり「精進料理」などが僧侶の食事とされたこともあります。
現在では宗派の違いで禁食の内容も違います。
日本と海外での食事に関わる宗教の影響が大きく異なるのは、日本の仏教では出家した僧侶のみが禁食の対象になるのに対し、海外の宗教では信者たち(仏教では在家と理解)も禁食の対象となることです。
それだけに日本では菜食主義や完全菜食主義に注目が集まったのは海外に比べると遅れており、これも日本に多く広まっている仏教の影響だといえるでしょう。
英国ではビーガンの人口が全人口に対する1%を越えており、70万人以上も存在するとビーガン協会が発表しています。
また米国においてもビーガン人口が2,000万人近くに達しており、5年も経たないうちに6倍に増加しています。
それに比べると日本ではビーガンもベジタリアンも注目されはじめたばかりだといえますが、ビーガン専門の食事を供給するレストランなども増加傾向にあります。
日本人発祥のマクロビオテック(Macrobiotic)とは?
近年では「日本食」にも注目が集まっています。
通称「マクロビ(正式名称はマクロビオテック)」と呼ばれ、「macro」とは「長い」、「bio」は「生命」という意味で、直訳すると「長生きする方法」を意味する食事です。
考え出したのは日本人ですが、アメリカから始まりました。
「マクロビ」は東洋の考え方を集約した食事で、「身土不二」「一物全体」「陰陽調和」の3つを原則としています。
「身土不二」とは、人間は土地と切り離せないものという意味で、「地産地消と土地の旬のものを食べる」という意味です。
「一物全体」は、1つのものは切り離すことのできない個体であり、「食材は全て残らず使い食べる」ということです。
「陰陽調和」は、ものには必ず両局面(表と裏・光と影・プラスとマイナス)があり、「季節などに合わせて温かい食事や冷たい食事などの対極にある食事をバランスよく採る」という意味があり、この3つにこだわってつくる料理です。
全体像としては「自然環境を大切にしたバランスの良い健康食」と理解してください。
ベジタリアンやビーガンと大きく異なるのは、禁止された食材がないということです。
食べてはいけない食材はないけれども、ビーガンと同じような発想で食材を大事にすることや、人間と土地の結びつきを大切にして長く環境を維持するためにも無駄に食材を使わないで健康な食事を採るということで、重なる部分が多くあります。
日本発祥の健康になれる美味しい食事にも注目してみてください。
昔の日本食はベジタリアンやビーガンに似たものだった!!
日本では家畜などの歴史は浅く、150年以上前の日本食はベジタリアンやビーガンに近いものでした。
鶏卵や牛乳などは高価なもので庶民が味わえることは少なく、「一十一菜」などのつつましい食事が普通でした。
何かお目出度いことがあったときくらいは、魚を食べたりすることはありましたが、肉を食べる文化が本格的に始まったのは文明開化で海外から伝わってきてからです。
しかし日本でも縄文時代などでは狩猟民族として肉を中心に食べていました。
肉を食べなくなったのは、日本人が米をつくるようになってからです。
農耕民族となった日本人にとって、牛は田畑を耕すのに欠かせず、馬は人を運び、鶏は時間を知らせ、犬は番犬になるということで動物を食べることをためらうようになったのです。
文明開化まで日本人が一切の肉を食べなかったわけではありませんが、ビーガニズムに似た考えを持っていた時期もあり、昔の日本の食事は現在で言うベジタリアンやビーガンに非常に近いものでした。
ベジタリアンやビーガンの人は栄養不足にならないの?
ベジタリアンやビーガンが健康食だといいますが、肉や魚、牛乳や卵は栄養が豊富です。
日本で卵は貴重な食品でした。
風邪をひいたり病気にならないと食べられない高価な食材だった時代もあります。
ベジタリアンやビーガンの人たちはどのように栄養を補給しているのでしょうか。
菜食主義というだけに同じような栄養分を含む野菜や果物を肉や魚のように加工して食べています。
ところがベジタリアンとビーガン発祥の地である英国において大きな事件がおきました。
ベジタリアンやビーガンの方向けに加工食品をつくっていた「ホールフーズ」という会社のトップが、ベジミートと呼ばれる大豆などを加工した食品は身体に良くないという内容の発言をしたのです。
ベジタリアンやビーガンの味方であったはずの加工会社が、自社の食品をはじめとする加工食品は環境には良いけれども人の手をかけすぎた食品は身体に害を与えると驚くことを発表しました。
「加工しないままの食品の方が自然で身体にも良く、加工された食品を食べるよりなら肉を食べた方が良い」という内容です。
これにビックリしたビーガン協会は、すぐさま反論しましたが、その後も「ビーガン食では栄養分が不足する」とか「脳が十分に働かない」などの意見が相次いで発表されています。
内容は「コリン」という栄養が欠乏すると腎臓や肝臓などの重要な臓器の支障をきたしたり、神経系の病気になる可能性が高くなるというものです。
また妊婦の人に「コリン」が不足すると胎児に影響を与えてしまうと、英国の栄養と健康を専門に研究するコンサルタントの博士が英国政府に意見したのです。
「コリン」は植物性食品にも含まれるが動物性食品の方が圧倒的に含有量は多く、特に牛肉や卵・魚などにはコリンが豊富でビーガン食はコリンの摂取を阻害しているということです。
ここでは「コリン」という栄養素に注目しましたが、他にも動物性食品に多く含まれる栄養素があります。
健康を目指してベジタリアンやビーガン食を採ったとしても、バランスの良い栄養を考えないと危険な状態になることが考えられます。
ベジタリアン食もビーガン食も、栄養のバランスなどを十分に注意したうえで採るようにしましょう。
ベジタリアンは健康志向・ビーガンは動物愛護を目的とした菜食主義!!
ここまでベジタリアンとビーガンという健康食の違いを中心にご紹介いたしました。
この記事を読んでいただき以下のようなことを解説しご理解が得られたはずです。
- ベジタリアンの語源は野菜のベジタブルではなくラテン語のvegetus(ベジェトゥス・「健全な」「新鮮な」「活力のある」という意味)からきた言葉
- ベジタリアンは菜食主義全体を指す用語で、ビーガンはもっと限定された「完全菜食主義」をあらわし、ベジタリアンに含まれるカテゴリー
- ベジタリアンは食事制限だけだがビーガンは日用品にも制限がされるライフスタイルをあらわす用語である
- 150年以上前の日本でもベジタリアンやビーガンに近い食生活をしていた
- ビーガン発祥の地であるイギリスではビーガン食に難色を示す意見が相次いでおり、議論が交わされている
- ビーガンは栄養バランス考えて食事を採らないと危険を伴うことがあるので注意が必要
ベジタリアンもビーガンも内容に違いはありますが最終的には同じ健康を求めた菜食主義です。
大きな違いはベジタリアンが自分の身体を第一に考える菜食主義であるのに対し、ビーガンは動物の命を擁護するために完全菜食主義をとるというところにあります。
双方とも栄養不足が心配され、過度に偏った食事をしていると自分だけでなく子供までに被害を与えてしまいます。
バランスよく皆が幸せになれるのが本当の健康食であることを心に刻んで食事を楽しんでください!