【血糖値の特徴】血糖値と糖尿病との関係性やコントロールする方法
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。
糖尿病のお話の中で、血糖値という言葉がよく出てきますよね。
「血糖値」とは、血の糖の値と書きます。
血液に関係する医学用語ということは、なんとなくわかるけれど、いったいどういうことなのか分かっていない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
また、血糖値が高いと、もしくは低いとどんなリスクがあるのでしょうか?
そこで今回は、血糖値の特徴や、血糖値と糖尿病との関係性や、血糖値を生活習慣からコントロールする方法についてご紹介します。
この記事の目次
【血糖値の特徴】血糖値は血液に含まれるブドウ糖の濃度
血糖値とは、血液に含まれているブドウ糖の濃度のことです。
ブドウ糖は、人間の脳、筋肉、内臓などでエネルギー源として利用されている物質で、英語では「グルコース」といわれます。
ブドウ糖は、血糖という形で動物の体内で血液を通して循環することで、身体中の細胞に届けられる仕組みになっています。
エネルギー源として、ブドウ糖は動物にとって不可欠なものなのですが、血液中に溶け込んでいるブドウ糖濃度が高すぎるとかえって体に有害となりますので、適切な濃度にコントロールすることがとても重要です。
そこで、ブドウ糖の濃度をコントロールするのに使われるのが、インスリンやグルカゴンというホルモンです。
このインスリンの量や働きが低下しているために、血液中のブドウ糖の濃度を適切な範囲にコントロールできなくなる病気が糖尿病です。
【血糖値の仕組み】血糖値が上がる理由を知ろう!
ブドウ糖は、食べ物を分解することで体内で作り出されています。
どのようにして食べ物を分解して、ブドウ糖を作り出しているのかご存知ですか?
食べ物を分解する時に活躍するのが、唾液や胃液、腸液などに含まれる消化酵素です。
消化酵素は、食べ物を分解して体にとって吸収しやすい栄養素に変えていく働きを持っている物質です。
例えばブドウ糖を作り出すのに関係しているのは、唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素で、食べ物を分解してブドウ糖に変えます。
こうして消化酵素によって生み出されたブドウ糖は、エネルギー源として全身の細胞に送り届けるために、腸から吸収されて血液中に取り込まれ、血液中のブドウ糖の濃度が上がります。
血液中のブドウ糖の濃度=血糖値ですから、このようにして血糖値が高くなります。
【血糖値と糖尿病】糖尿病になると血糖値が高くなる理由
血液に含まれるブドウ糖の濃度は、インスリンやグルカゴンとよばれるホルモンによって、一定の範囲に収まるようにコントロールされています。
インスリンは、すい臓から分泌されるホルモンです。
血液中のブドウ糖を、筋肉や肝臓に取り込ませることで血糖値を下げる働きをしています。
グルカゴンには、肝臓や骨格筋にグリコーゲンという形で蓄えられたブドウ糖を血液中に放出させて、血糖値を上げる働きがあります。
インスリンとグルカゴンは、全く反対の働きをするホルモンといえます。
健康な人の場合、食事によって血糖値が上がると、インスリンがすい臓から分泌されます。
高くなった血糖値は、インスリンの働きで下げられます。
ところが糖尿病の方は、インスリンを作り出す力が弱くなったり、血糖値を下げる働きが低下したりしています。
血糖値を下げる働きをするホルモンは、インスリンだけです。
したがって、インスリンの量や働きが低下すると、血糖値を十分に下げられなくなるのです。
これが、糖尿病の方の血糖値が高どまりしてしまう理由です。
【血糖値の種類】血糖値には3種類の状態がある!
血糖値やヘモグロビンA1C(HbA1C)の数値から、血糖値の状態は「糖尿病型」「境界型」「正常型」の3種類に分類できます。
【血糖値の種類】糖尿病型血糖値
文字通り糖尿病と診断された血糖値です。
食事のメニューを見直したり、日常生活に運動を積極的に取り入れて対処します。
食事の見直しや、運動を2〜3ヶ月続けても効果がみられない場合は、薬を使った治療にうつります。
・空腹時血糖値=126(mg/dL)以上、または、ブドウ糖負荷後2時間値=200(mg/dL)以上
・ヘモグロビンA1C=6.5%以上
血糖値とヘモグロビンA1Cのどちらも異常であれば、糖尿病と診断されます。
もし、血糖値とヘモグロビンA1Cのどちらかだけが異常であれば、再検査をします。
2回目の検査でもどちらかが異常なら糖尿病と診断します。
【血糖値の種類】境界型血糖値
境界型血糖値は、いわゆる糖尿病予備群とみなされているのが境界型です。
正常な血糖値ではないけれど、糖尿病型までには至っていない状態です。
境界型の場合は、食事メニューの見直しや運動などの生活習慣の改善などが対処方法です。
・空腹時血糖値=110(mg/dL)以上、26(mg/dL)未満
・ブドウ糖負荷後2時間値=140(mg/dL)以上、200(mg/dL)未満
【血糖値の種類】正常型血糖値
糖尿病型でも境界型でもない、健康な人の血糖値パターンです。
・空腹時血糖値=110(mg/dL)未満かつブドウ糖負荷後2時間値=140(mg/dL)未満
・ヘモグロビンA1C=6.5%未満
【血糖値が低い】低血糖になった時の体への影響は?
血糖値が下がりすぎた、つまり血液中のブドウ糖が少なくなりすぎた状態を「低血糖」といいます。
具体的には、血糖値が70(mg/dL)以下となった状態です。
血糖値が70(mg/dL)を下回るようになると、汗が出る、お腹が空く、あくびが出る、しびれ感、力が入らない感じなどの症状が現れ、これを「低血糖症状」とよびます。
更に血糖値が下がると、頭痛や目のかすみも起こります。
このような症状が見られる場合は、低血糖に陥っている可能性があるので、すぐに血糖値を測ってください。
特に血糖値が50(mg/dL)以下にまで下がると、けいれんや意識の消失、異常な行動などの症状が現れますが、これは脳がエネルギー不足状態になっているからで、生命の危険があります。
すぐに砂糖やジュースなどを摂取して、血糖値を高めなければなりません。
意識がなくなり、飲み込めない場合は、砂糖を水で溶かして、唇と歯ぐきの間に塗り込み、救急車を呼んでください。
ただし、中には日常的に低血糖になっている人や、低血糖に陥っていることに気がつかない人などの場合に起こる「無自覚性低血糖」という状態もあります。
そのような人の場合は、自覚症状が現れることなく、急にけいれんや意識消失を起こすことがあるので、注意が必要です。
低血糖をもたらす原因としては、大きく分けて3つあります。
- インスリンの飲み薬や注射薬をたくさん使いすぎた
- インスリンを使った次の食事の時間が遅くなった
- お腹が空いた状態で運動をしてしまった
低血糖は、「薬の量や時間を間違えない」「空腹時には運動をしない」などの日常生活での工夫によって予防できます。
低血糖に陥らないように、気をつけてください。
【血糖値が高い】高血糖になった時の体への影響は?
血液中のブドウ糖は、欠かせない重要な物質ですが、多すぎて血糖値が高い状態は、かえって有害となります。
血糖値が上昇した場合に生じる病気から身体を守る機能が備わっていないからです。
血糖値が高くなった場合のリスクは、急激に症状が現れる急性合併症と、ゆっくりと症状が現れる慢性合併症の2つに分けられます。
急性合併症では、高血糖性昏睡という意識障害が挙げられます。
高血糖性昏睡では、早期に大量のインスリンを投与する必要があり、そうしないと生命にかかわります。
一方、慢性合併症では、命に関わることは少ないですが、失明のリスクが高い網膜症・足が腐って切断しなければならなくなる神経障害、透析になるリスクが高い腎症の3大合併症があります。
いずれも日常生活に大きな影響を与え、長期にわたって苦痛をもたらします。
なお、血糖値が180(mg/dL)以上になると、尿にブドウ糖が含まれるようになります。
糖尿病という病気の名前の由来は、ここにあります。
【血糖値のコントロール】血糖値は食生活でコントロールしよう!
正常な血糖値は、空腹時で60〜110(mg/dL)、食後で100〜140(mg/dL)です。
この範囲に血糖値をおさめるようにコントロールするにはどうすればいいのでしょうか?
そこで大切なのが、生活習慣の見直しです。
まずは、食生活に着目してください。
適切なエネルギー量は、体重や身長を基準に定められています。
・デスクワークが主な人…身長(m)×身長(m)×22×25
・肉体労働の人…身長(m)×身長(m)×22×30
1日の摂取カロリーが、この適切なエネルギー量の範囲内におさまるように食べすぎないようにしましょう。
そして栄養バランスの偏りのない食事を1日3食、規則正しく食べるようにしてください。
カロリー計算が難しいという人は、「食事は腹八分目まで」「野菜をたくさん食べる」などから取り掛かるのもいいでしょう。
また、運動も重要です。
適度な運動は、身体の新陳代謝を高め、血液の流れを改善させます。
そこでオススメしたいのが、ウォーキング、スイミング、サイクリングなど有酸素運動です。
こうした軽くて長時間続けられる運動は、脂肪の燃焼効果が高く、インスリンの働きを改善できるからです。
食生活を整え、運動を日常に取り入れた生活習慣の改善で、糖尿病を予防しましょう。
【食後の血糖値】食後高血糖は糖尿病予備軍に含まれる!?
食後高血糖とはいったいどのような状態なのでしょうか?
食事を取った後の血糖値を「食後血糖値」といいます。
食事を食べれば、誰でも食後血糖値は高くなります。
健康な人なら食事から2時間も経過すれば高かった血糖値も、自然に140(mg/dL)未満になるまで下がります。
健康な人なら、食後血糖値を気にする必要がありません。
ところが、2時間以上経っても血糖値が下がらず、140(mg/dL)以上の高値を保ち続けてしまう場合があり、これを「食後高血糖」といいます。
近年のいろいろな研究結果から、食後高血糖が、糖尿病患者さんだけでなく、糖尿病になりかけている、つまり糖尿病予備群に含まれる方々においても、とても重要であることが明らかになってきました。
【食後血糖値と糖尿病】食後血糖値は隠れた糖尿病患者を見つける数値
食後高血糖は、糖尿病や糖尿病予備群の方々にとって、健康上とても重要な意味をもちます。
糖尿病が軽度の方や、発症初期の方、そして糖尿病予備群の方では、空腹時血糖値が110(mg/dL)を下回り、正常値を示してしまうことがあります。
このような方々に対して、空腹時血糖値だけで糖尿病かどうかを診断してしまうと、糖尿病を見逃してしまう可能性があり、気がつかないうちに糖尿病が進行したり、予備群だったのに糖尿病を発症してしまったりするリスクが生まれます。
そこで、食後血糖値を測れば食後高血糖が分かりますから、これを利用して隠れた糖尿病を見つけ出します。
糖尿病を発病している方だけでなく、糖尿病予備群の方にとっても、隠れた糖尿病を見逃さないために、食後高血糖はたいへん重要です。
【食後高血糖にリスク】インスリンが足りないことが原因です!
食後高血糖を示している方は、インスリンの量が足りない、もしくは働きが悪くなっています。
そのため、身体の中に取り込まれたブドウ糖を分解して減らせず、食事によって高くなった血糖値を正常な値にまで戻せません。
この状態を「耐糖能異常」といいます。
耐糖能異常を示している方は、そうでない方と比べて動脈硬化が進みやすい傾向があることが明らかになっています。
動脈硬化は、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの血管系の病気を引き起こすリスク要因の一つです。
糖尿病に気がつかず、適切な治療が受けられていない場合、心臓や脳の病気を起こしやすくなります。
もちろん、糖尿病性網膜症などの他の合併症のリスクも高まります。
ポイント
空腹時血糖値だけでなく、食後高血糖かどうかをチェックすることが、糖尿病の方の場合は、合併症を防ぐ、そして糖尿病予備群の方の場合は、糖尿病を予防するという点から重要です。
糖尿病と診断される前に血糖値を生活習慣からコントロールしよう!
今回は、血糖値の特徴や、血糖値と糖尿病との関係性や、血糖値を生活習慣からコントロールする方法についてご紹介しました。
血糖値は、食事によって高くなりますが、インスリンというホルモンの働きで健康な人は自然に下がっていきます。
血糖値は、低くても高くても健康に悪影響があり、低すぎる、反対に高すぎる場合は、意識障害をもたらし、生命にかかわるとても危険な状態になる場合があるので、注意が必要です。
今の内から糖尿病にならないよう、食生活や運動などの生活習慣に気を配ることも大切ですが、もし糖尿病の気配があった場合は、食後高血糖かどうかもチェックし、血糖値を適切な範囲におさめるようにしましょう。
- 血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖の濃度の値です
- 血糖値は「糖尿病型」「境界型」「正常型」の3種類ある
- 食後の血糖値が高い、食後高血糖を見つけ出すことが初期段階の糖尿病の発見につながる
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