【アルコール依存症】気づいていない人が大半!アルコール依存症の症状や予防法をチック
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。
会社の飲み会や忘年会で「飲みすぎ」「酔いすぎ」と言われたことはありませんか?
社会人は何かとお酒を飲む機会が多いですし、習慣的にアルコールを摂取している人も多いのではないでしょうか。
お酒を飲むと楽しい気分になりますが、飲みすぎは禁物です。アルコール依存症の患者は年々増えており、女性や高齢者の患者も増えてきています。
また、アルコール依存症の人は自分で気づいていない場合が多く、身体的・精神的・社会的な問題を抱え、自分一人では抜け出せない状況に陥るケースが多いです。
ですから、アルコール依存症をしっかりと理解し、依存症に陥る前にお酒との付き合い方を見つめ直しましょう。
この記事の目次
アルコール依存症にはどのような症状があるのか
アルコール依存症はとても怖い病気です。
「自分は大丈夫」「絶対にアルコール依存症にはならない」と思っていても、気が付いたらアルコールがないと生きていけない体になっているということもあります。
アルコール依存症で治療が必要な患者は80万人ほどいるといわれていますが、アルコール依存症の疑いがある人は450万人近くいるのではないかとされています。
俗にいう「アルコール中毒」「アル中」とはアルコール依存症のことを指し、慢性的なアルコール中毒のことをいいます。
短時間に大量のアルコールを摂取したり、一気飲みをしたりして意識を失ってしまう状態は「急性アルコール中毒」といい、アルコール依存症とは違います。
昔は、アルコール依存症というと「男性の病気」というイメージが大きかったですが、最近では働く女性が増えお酒を飲む機会が増えたこともあり、女性の患者が増加しています。
また、高齢化に伴い高齢者の患者も増加傾向にあります。
では、アルコール依存症はどのような人がなりやすく、どのような症状があるのでしょうか。
アルコール依存症の経過と症状
- 耐性
アルコールを習慣的に摂取していると、まず耐性が形成されます。
もともとそんなにアルコールに強くなかった人でも、毎日のように摂取することで徐々にアルコールに強い体質になり、少量では酔わなくなっていきます。
「以前に比べてお酒を飲む量が増えた」という人は、アルコールに対する耐性が形成されている可能性があります。
- 精神依存
耐性が形成されると少量のアルコールでは物足りなくなり「もっとお酒が飲みたい」「もっと酔いたい」と思うようになります。
すると、アルコールを大量に摂取するようになり、お酒が切れてしまうと家中を探しまわる、夜中でも早朝でも買いに出かける、といった行動をとるようになります。
- 身体依存
耐性、精神依存という経過をたどった後、最終的には身体的な症状が出現します。
お酒を飲めない状況に長時間置かれると、手の震えや多量の発汗、不安、イライラ、血圧の上昇などの離脱症状が現れ、それを止めるためにまたお酒を飲むという無限ループから抜けられなくなります。
重症になると、幻覚や幻聴などの離脱症状が現れる人もいます。
アルコール依存症の原因や危険因子にはどのようなものがあるの?
このようにとても恐ろしいアルコール依存症ですが、どのような原因や危険因子があるのでしょうか。
原因や危険因子を知れば、アルコール依存症を未然に防ぐことができるかもしれません。
アルコール依存症の原因
- 素質
アルコール依存症には生まれつきの体質(素質)が大きく関わっていますが、日本人の約4割は生まれつきアルコールに弱い体質であることがわかっています。
体質の違いを決めるのは、「ALDH2」という酵素で、この酵素がうまく働かないとアセトアルデヒドが体内に貯留します。
このアセトアルデヒドは二日酔いの原因となる物質で、お酒に弱い人はとても辛い思いをすることになります。
この4割の人がアルコール依存症になりやすいのかというとそうではなく、アルコールに強い体質の6割の方がアルコール依存症患者の9割を占めています。
アルコールに強く、多量のお酒を飲める体質であることが原因になっているのです。
- 環境
もう一つの原因は環境で、長期間にわたり多量のアルコールを摂取してきたことなどが原因になります。
環境要因は複雑で、子どもの頃の環境や飲酒を始めた時の飲酒環境、職場や家庭でのストレスなど多岐にわたります。
子どもの頃から周りで飲酒している人が多く、自分も若い頃から習慣的にお酒を飲んでいたという場合など、長期間多量のお酒を飲んでいたことが大きく関わっています。
アルコール依存症の危険因子
- 性別・年齢
アルコール依存症は性別や年齢に関係なく発症しますが、習慣的な飲酒を始めてからアルコール依存症になるまでの期間は女性の方が短く、男性より早く依存症になります。
また、飲酒を開始する年齢が早いほどアルコール依存症になりやすく、1年遅くなるにつれて、アルコールに関する問題を起こす可能性が5%ほど低下するともいわれています。
- 精神疾患の有無
アルコール依存症の患者の中にはうつ病の患者が多く、逆にうつ病や不安障害、パニック障害などの精神疾患を持っている人はアルコール依存症になる危険性が高くなることもわかっています。
精神的な辛さから解放されたいという思いでお酒を飲んでしまう人が多いですが、かえって症状が悪化したり治るまでに時間がかかったりするため、悪循環に陥ります。
ニコチン中毒やギャンブル依存症の人もアルコール依存症を併発しやすいため、注意が必要です。
アルコール依存症の早期発見のためのチェック項目
アルコール依存症という病気のことは知っていても、自分が依存症だと思っていない人や、依存症だと認めたくないという人が多く、受診や治療に至らないというケースはとても多いです。
アルコール依存症は時が経つにつれて進行していく病気なので、治すためには早期発見・早期治療がカギになります。
アルコール依存症の診断には「久里浜式スクリーニングテスト」というチェックシートが使われます。
ここでは久里浜式スクリーニングテストのチェック項目を紹介します。
久里浜式スクリーニングテスト
酒が原因で、大切な人(家族や友人)との人間関係にひびが入ったことがある
ある 3.7点
ない -1.1点
せめて今日だけは酒を飲むまいと思っても、つい飲んでしまうことが多い
ある 3.2点
ない -1.1点
周囲の人(家族・友人・上役など)から大酒飲みと非難されたことがある
ある 2.3点
ない -0.8点
適量でやめようと思っても、つい酔いつぶれるまで飲んでしまう
ある 2.2点
ない -0.7点
酒を飲んだ翌朝に、前夜のことをところどころ思い出せないことがしばしばある
ある 2.1点
ない -0.7点
休日には、ほとんどいつも朝から飲む
ある 1.7点
ない -0.4点
二日酔いで仕事を休んだり、大事な約束を守らなかったりしたことが時々ある
ある 1.5点
ない -0.5点
糖尿病、肝臓病、または心臓病と診断されたり、その治療を受けたことがある
ある 1.2点
ない -0.2点
酒がきれたときに、汗が出たり手が震えたり、イライラや不眠など苦しいことがある
ある 0.8点
ない -0.2点
商売や仕事上の必要で飲む
ある 0.7点
時々 0点
ない -0.2点
酒を飲まないと寝つけないことが多い
ある 0.7点
ない -0.1点
ほとんど毎日、3合以上の晩酌をする(ウィスキーなら1/4本以上、ビールなら大瓶3本以上)
ある 0.6点
ない -0.1点
酒の上の失敗で警察のやっかいになったことがある
ある 0.5点
ない 0点
酔うといつも怒りっぽくなる
ある 0.1点
ない 0点
判定基準
- 2点以上…重篤問題飲酒群
- 2~0点…問題飲酒群
- 0~-5点…問題飲酒予備群
- -5点以下…正常飲酒群
重篤問題飲酒群の人は、今すぐにでも専門医療機関を受診するべきです。
問題飲酒群の人もとても危険な状態なので、注意が必要です。
アルコール依存症の症状や合併症にはどのようなものがある?
アルコール依存症には、身体的、精神的、社会的な症状がありますが、具体的にはどのような症状が現れるのでしょうか。
アルコール依存症による<身体的症状>
アルコールは身体的にも様々な支障をきたします。
臓器にも悪影響を及ぼし、内臓疾患を併発しやすくなるため注意が必要です。
具体的な症状
・アルコール性肝炎による倦怠感
・肝硬変による黄疸、腹水など
・肝臓がんのリスク増加
・アルコール性膵炎による胸や背中の痛み
・糖尿病による手足のしびれ、失明
・胃炎による胃痛
・アルコール性心筋症による動悸・息切れ
・脳萎縮による歩行障害、人格変化、ろれつが回らなくなる
・アルコール性神経障害による手足のしびれ、筋肉痛
アルコール依存症による<精神症状>
アルコール依存症になると精神的な不調をきたし、正常な生活を送ることが難しくなります。
具体的な症状
・不適切な行動を起こす
・気分が不安定になる
・良好な人間関係が保てなくなる
・物忘れが激しくなる
・注意力が散漫になる
・やる気が起きなくなる
・情緒不安定になる
アルコール依存症による<社会的影響>
アルコール依存症の症状には社会的な影響もあり、身体的・精神的な症状の二次的な症状ともいえます。
周りからの信用や信頼を失いかねないため、できるだけ早く治療をしましょう。
社会的な影響
・家族へのDV、児童虐待
・仕事に行くことができなくなる
・飲酒事故を起こす
・身勝手な行動で周囲に迷惑をかける
・社会的なルールが守れなくなる(万引きなど)
これらの問題は、自分だけでなく家族や周囲の人たちを巻き込み、会社を解雇されたり、離婚することになったり、最悪の場合逮捕されるケースもあります。
1人で治療をするより、周りの支えがあるほうが治療はスムーズに進みます。
問題を起こして周りに誰もいなくなってしまう前に、早い段階で治療を開始しましょう。
アルコール依存症の離脱症状や抜け出せなくなる理由とは?
離脱症状とは、長期間飲酒を続けていた人が飲酒を中止した時に現れる症状のことで、かつては禁断症状と呼ばれていました。
アルコール依存症の人は、アルコールが体内から抜ける=血中濃度が下がると、アドレナリンの過剰分泌や交感神経系の過剰興奮が起こり、様々な不調が現れます。
これが離脱症状の原因で、具合的には下記のような症状を呈します。
・手や指の震え
・多量の発汗
・吐き気や嘔吐
・寝汗
・興奮による睡眠障害
・焦燥感
・頻脈
・高血圧
・イライラ
・不安
などの小さな症状がまず現れます。
このような症状と不眠の状態が続くと、
・幻覚
・幻聴
・被害妄想
・追跡妄想
などの大きな症状が現れることもあります。
これらの症状は本人にとってはとても辛く、耐え難いものです。
イライラや不眠などの状態から一刻も早く解放されたいという思いが強くなり、お酒を飲んで症状を抑えるという悪循環に陥る人が多いのが現状です。
アルコール依存症を自力で治すのは難しいため、専門医療機関で適切な治療を受けることが望ましいです。
しかし、本人がアルコール依存症であることを自覚していない場合や治療を望まない場合は、治療自体が難しく、悪循環から抜け出すことができなくなるのです。
また、自力で治そうと思っていても離脱症状の辛さには耐えられない人が多く、しばらく断酒をしていてもまたお酒を飲む場合が多くあります。
アルコール依存症を正しく理解して予防しよう
アルコール依存症は、早い段階で気づき治療を開始すれば、比較的治療効果があがりやすい病気です。
もし不安を感じたら、できるだけ早いうちに対応・対処しましょう。
重度のアルコール依存症は治療がとても難しいので、まずはアルコール依存症にならないように予防することが1番です。
アルコール依存症になる前に出来る3つの予防法
アルコール依存症の正しい知識を持つ
アルコール依存症はとても怖い病気であることはお話ししました。
原因や危険因子をきちんと理解し、正しい知識を持つことで予防に努めましょう。
飲酒をコントロールする
習慣的に飲酒している人は、飲酒する日より飲酒しない日を多く設けるようにしましょう。
すぐには難しい場合でも、徐々に飲酒する日を減らす努力が必要です。
また、記憶がなくなるまでの深酒はしないで、適量の飲酒を心がけましょう。
ルールを作る
「1人の時は飲まない」「1日に1缶まで」「〇時以降は飲まない」などのルールを作り、ルールを守りながらお酒を飲みましょう。
これらの方法を参考にして、この機会にお酒との付き合い方を見つめ直してみましょう。
最後に【アルコール依存症にならないためにも節度のある飲酒を】
今回は、アルコール依存症の症状や原因、怖さについてお話ししました。
アルコール依存症は誰しもが発症し得る病気です。
自分や大切な人たちがアルコール依存症で苦しい思いをすることがないように、正しい知識を身につけておきましょう。
- アルコール依存症は時間が経つにつれ治療が困難になる
- 身体的・精神的・社会的な様々な症状が現れる
- 依存症であることを自覚していない人が多く、治療に至らないケースが多い
- 早期発見・早期治療が大切
アルコール依存症は予防することが第一です。
お酒とは上手に付き合って、楽しく飲める環境を整えましょう。
何か引っかかる点がある人は、早い段階で治療を受けることをおすすめします。
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