鼻が詰まる・・・それは蓄膿症かも!?蓄膿症の治し方についてご紹介!
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。
風邪を引いた後に鼻づまりやネバネバした鼻水が続いているという症状は経験したことはあるでしょうか。
「風邪は治ったのに鼻水が止まらない」「鼻が詰まっている」などの症状は一見風邪の症状と似ており見分けがつかないため、風邪が長引いていると誤解しがちになりますが、「蓄膿症」かもしれません。
蓄膿症は慢性副鼻腔炎とも呼ばれ、風邪とは治療方法が異なるため、早期の診断、早期の治療が望まれます。
今回は「蓄膿症(=慢性副鼻腔炎)」の症状、また東洋と西洋での捉え方や治療方法の違いを比較した上で、日頃から行える対策方法について説明します。
症状に身に覚えのある方や、実際に症状が出てしまっている方の参考になり、早期の治療で症状改善につながれば幸いです。
蓄膿症とは?
蓄膿症とは風邪などによる細菌やウイルスの感染によって副鼻腔に炎症が起き、膿が溜まってしまうことを言います。
文字通り「膿」が「蓄積」してしまうので蓄膿症と呼ばれますが、最近では「副鼻腔炎」の方が一般的になっています。
性別や年齢に差はなく、誰にでも起こりうる症状です。
風邪が治った後や花粉症のシーズンが終わっているのにも関わらず、鼻水が止まらなかったり、ネバネバとした黄色の鼻水が出てくることが蓄膿症の特徴です。
鼻の周囲には副鼻腔と呼ばれる空洞があり、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4組が存在します。
そのうちのどこかに炎症が起きている状態を副鼻腔炎と呼びます。
また副鼻腔炎には発症からが短い急性副鼻腔炎と、発症から3ヶ月以上経過している慢性副鼻腔炎があります。
蓄膿症と呼ばれるのは慢性化した副鼻腔炎になります。
蓄膿症の原因は細菌によると言われています。細菌感染して炎症が起こると、粘膜が腫れてきたり粘土の高い鼻水が出るようになります。
粘膜の腫れや粘土の高い鼻水によって副鼻腔の入り口がふさがってしまい、異物を排泄しにくくなり鼻水が膿が蓄積していきます。
こういった急性副鼻腔炎が続いてしまい、慢性化してしまうことが蓄膿症の原因と考えられています。
蓄膿症の症状
次に、蓄膿症の主な症状について細かく説明します。
○鼻水
蓄膿症で一番多く見られる症状が鼻水です。
黄色や緑色など色味がかった鼻水が特徴的で、粘性があるので鼻をかんでもスッキリしない状態が続きます。
同じく鼻水が出続ける症状で「アレルギー性鼻炎」がありますが、この場合はサラサラとした透明の鼻水が出ますので、ドロドロとした蓄膿症の鼻水と比較することで見分けることができます。
○鼻づまり
副鼻腔の粘膜が最近やウイルスによって炎症が起き腫れると、鼻腔と副鼻腔をつなぐ小さな穴(自然口)がふさがります。
すると副鼻腔から鼻腔へ鼻水を排出することが困難になるため、鼻づまりが起こります。
粘膜の一部が盛り上がって「鼻ポリープ」や「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれるできものが形成される場合があります。
これらも鼻づまりの原因となります。鼻づまりが起こると、頭痛が起きたり就寝時のいびきや口呼吸につながります。
○後鼻漏(こうびろう)
鼻水の量が増加したり、粘度が高まることにより、鼻水が喉におりてくることがあります。その症状を後鼻漏と言います。
ネバネバしているため鼻をかんでも出にくく、口から出すか我慢して飲み込むしかありません。
そのせいで声がうまく出なかったり咳が続くこともあります。また鼻に不快感があり、匂いや口臭が気になるのもこの症状の特徴です。
○味覚・嗅覚の異常
鼻がつまっていることで嗅覚が鈍ってしまい、また味覚も障害がでてきます。
匂いを感じる嗅粘膜は鼻の奥の方の嗅裂という部位にあります。
粘膜が腫れているとにおいの粒子が奥まで到達できずに匂いを判別することが出来なくなります。
治療が遅れると改善しにくくなってしまう場合があります。
○眼や鼻周囲、頭痛などの痛み
副鼻腔内に膿が溜まることで圧迫感が生まれ、こめかみの辺りや額部分などに痛みや頭重感を伴うことがあります。
虫歯でもないのに歯が痛む場合もあります。
蓄膿症の改善方法
蓄膿症の症状を改善するには薬物療法をはじめ、吸引など多くの選択肢があるので方法別に解説します。
蓄膿症の改善方法①薬物療法
①抗生物質
蓄膿症の原因は何らかの細菌感染なので、原因となる細菌をやっつけてくれる抗生物質を服用します。
一般に多く処方されるのは「マクロライド系」と呼ばれる分類の抗生物質です。
この抗生物質を通常よりも少量で2〜3ヶ月服用するのが効果的になります。
菌を徹底的にやっつけるというよりは炎症している服鼻腔の働きを正常化させることが主な目的です。
抗生物質の服用にはいくつか注意点があります。
・薬疹(薬を服用したことによる湿疹、アレルギー反応)がでる可能性がある。
薬が体に合わないと薬疹という蕁麻疹のような湿疹の症状が出ることがあります。
少しだけ皮膚に赤みが帯びるような軽い症状から全身が真っ赤になり腫れて強い掻痒感を伴う重度の症状まで個人差がありますが、薬を服用したことによる反応であればその薬が体に合わない可能性があることを示しています。
・薬の飲みあわせが悪いものもある。
薬を複数飲んでいる方は組み合わせによっては効果が弱まって本来期待された効果を発揮できなかったり、逆に効果が強まってしまって期待されない作用(副作用)が出てしまう場合もあります。
・お腹が緩くなって下痢を起こしてしまうことがある。
抗生物質は細菌に対して効果を発揮する薬ですが、人間のお腹の中にある消化吸収を助けてくれる細菌まで減らしてしまう場合があるので、下痢の症状が出てしまうケースもあります。
皮膚に症状が出たり、持病で他に薬を飲む場合の飲みあわせが気になったり、お腹が緩くなってしまった方は自分勝手に薬を中止するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談してみましょう。
②各症状に対しての薬
実際に出ている症状に対しての薬を服用します。
・鼻水や痰の排出を促す薬
鼻が詰まっていれば、鼻水の粘度を調節して出しやすくしてくれたり痰の切れを良くする薬を服用します。カルボシステイン(商品名:ムコダイン)、アンブロキソール(商品名:ムコソルバン)等がそれに当たります。
・鼻水を抑える薬
垂れてくる鼻水に対しては抗ヒスタミン薬という分類の薬を服用します。アレルギー症状に対して効果があり鼻水を抑えてくれますが、眠気が出る場合があります。
最近では研究が進み様々な抗ヒスタミン薬が発売されており、眠気の少ないものや1日1回の服用でいい薬もあるため薬の影響が気になる方は自身の生活スタイルに合うように医師に相談してみましょう。
このように実際に出ている症状を抑えるために薬を服用することを対症療法といいます。
蓄膿症では原因菌をつぶしてくれる抗生物質と症状に対しての薬の組み合わせで処方されるのが一般的です。
蓄膿症の改善方法②ネブライザー療法
ネブライザーとは、薬を噴霧して鼻の奥まで到達させる吸入器具の名称です。操作も簡単で、薬液を鼻の穴から噴霧すると鼻粘膜から吸収され早く効果を得ることが出来ます。
また局所的に作用させることが出来、全身への作用を避けられるため副作用も少ないのが特徴的です。
内服薬に加えて、点鼻薬もセットで出ている処方もよく目にします。
蓄膿症の改善方法③鼻吸引
副鼻腔内に鼻水が詰まっている場合に、装置によって吸入して物理的に取り除く方法です。
症状が重い方向けで、まだ自分で鼻をかむことが出来ない小児や乳幼児に多く施される印象です。
蓄膿症の改善方法④手術療法
症状が慢性化し、鼻ポリープや鼻茸ができてしまった場合には手術による治療を検討します。
一昔前までは蓄膿症の手術は痛いというイメージが持たれていました。
歯茎を切って鼻腔に溜まった膿を取り除くという方法が一般的で、痛みを伴いかつ、頰の腫れやしびれなどの術後後遺症が問題となっていました。
しかし最近では内視鏡でも処置が可能になり大幅な時間短縮と、出血や痛みの軽減ができるようになりました。
術後も早期に退院できるようになり、以前よりも手術に対する抵抗が減ってきています。
自分でできる蓄膿症対策方法
自身でできそうな蓄膿症の対策について説明します。
①症状の確認をする
風邪なのか蓄膿症なのか判断できない場合、以下の症状があったら蓄膿症かもしれないのでご自身でチェックしてみてください。
- 鼻水や鼻づまりがずっと続いている
- 鼻水が臭う
- 粘度の高い鼻水が出る
- 匂いがわからない
- 頰の部分が痛む
- 目の奥が痛む
- 額、眉間部分が痛む
風邪と蓄膿症では症状が類似しているため区別が難しい場合がありますが、鼻水の性質や痛む部位は異なってきます。
当てはまる症状があれば早めに受診をお勧めします。
②市販薬で対応
市販でも蓄膿症の薬はいくつか販売されていますので、紹介します。
・チクナイン
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漢方薬の辛夷清肺湯が含まれており、服鼻腔の炎症を抑えながら「膿」の排出を促します。
錠剤と顆粒の2タイプがあり、錠剤が苦手なお子様も服用が可能です。
・ツムラ漢方葛根湯加川きゅう辛夷エキス顆粒
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漢方成分の葛根湯加川きゅう辛夷の成分で葛根湯をベースにして鼻づまりを改善していく漢方薬になります。
医療用と同じ成分で構成されており十分な効果が期待できます。
東洋医学からみた、蓄膿症の原因
東洋医学の観点から原因について説明します。
東洋医学では西洋医学と異なり、症状に対しての治療ではなく「体質改善」を目的とし、偏っている体のバランスを整えることで症状を改善していくという考え方のもと治療が行われます。
体のどこかに「炎症」が起きている場合、東洋医学では「熱が過剰にこもっている」と解釈します。
漢方薬を服用し熱を体内に分散させ、体の免疫力を正常化させて自身の抵抗力にて症状を改善していく方法がとられます。
東洋医学から見た蓄膿症の改善方法
東洋医学においては漢方薬の服用で体質改善をしていきます。
蓄膿症(副鼻腔炎)の症状で治療によく用いられる漢方薬について紹介します。
○辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
粘度の高い鼻水や痰、後鼻漏の症状に対して効果を発揮します。
鼻づまりにも効果があり、粘度を下げてくれて膿を出しやすくしてくれます。
○葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
鼻づまりや鼻閉、後鼻漏が慢性化した時に有効です。
風邪の時によく使用される「葛根湯」に、血行をよくして充血等を改善してくれる働きの「川芎」と肺を温めて鼻腔を通じて悪寒や頭痛や鼻づまりを改善してくれる「辛夷」という生薬が加わった漢方薬です。
○荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
炎症の原因と考えられている体内に溜まった余分な「熱」を追い出し鼻の通りを改善します。
首から上の炎症に対して効果があるため、鼻づまり以外にも扁桃炎やにきびにも効果があります。
漢方薬は西洋医学の治療法とは異なり、原因に直接作用するわけではありません。
そのため、薬を服用してから効果が出るまで時間がかかると思われがちですが、その時の症状に適している漢方薬を選ぶことが出来れば即効性があると言われています。
また漢方薬が効きやすい体質の方には早めに効果が出る傾向にあります。
最近では抗生物質と症状に対しての薬に合わせて漢方薬も同時に処方する医師も多く、西洋東洋問わずに治療が行われている印象を受けます。
蓄膿症についてまとめ
蓄膿症は風邪と似た症状のため、自分自身では判断が難しい症状です。
しかし中には蓄膿症に特徴的な症状もあるため、自覚症状として当てはまるものがあれば受診や市販薬を購入するなど早めの対応が必要です。
治療法も選択肢が多いため自分にあった方法があると思うので、気になる症状がある方は早めに相談などしてみることをお勧めします。
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