胃腸風邪とはサヨナラ!しっかり対処して感染を防ごう!【胃腸風邪とは】
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。
よく「お腹からくる風邪」といいますが、これは「胃腸炎」のことで、普通の風邪とは違います。
胃腸風邪は、嘔吐や下痢、発熱、関節痛などがあり、感染するととても辛くて厄介な病気なので、できるだけ早く治したいですよね。
胃腸風邪にはいくつかの種類があり、中には感染力がとても高いものもありますので、予防はもちろん、感染した時の対処法をしっかりと知っておくことが大切です。
ここでは、予防法や対処法について詳しく説明していこうと思います。
この記事の目次
お腹からくる風邪「胃腸風邪」とは?風邪との見分け方は?
胃腸風邪はよく「お腹からくる風邪」といわれますが、これは急性胃腸炎のことで、風邪とは症状が違います。
「お腹からくる風邪」「お腹の風邪」「腸の風邪」というのはあくまで俗称で、「感冒」といわれる風邪とは異なります。
ここでは「風邪」と「胃腸風邪」の違いについて説明していこうと思います。
風邪の症状
主な症状としては
- 鼻水
- のどの痛み
- 咳
- 発熱
といったものがあり、90%以上が、ライノウイルスやコロナウイルスなどの「ウイルス」が原因です。
一般的には鼻腔から喉頭までの上気道に症状が現れるもので、時として気管、気管支・肺などの下気道まで及ぶことがあります。
鼻から肺までの「気道」に起こるものが「風邪」で、肺より下の腹部などには症状が現れません。
胃腸風邪の症状
胃腸風邪の主な症状は、
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 発熱
といったものがあり、鼻水や咳、のどの痛みなどの「気道」の症状は現れず、胃や腸などの消化器の症状が現れます。
下痢や吐き気がある場合は、風邪ではなく胃腸風邪=胃腸炎である可能性が高いです。
胃腸風邪はインフルエンザが流行する時期と重なることが多いですが、インフルエンザも嘔吐や吐き気を伴うことがあるため、見分けることが難しい場合があります。
インフルエンザの症状には
- 急激に上がる高熱(38度以上)
- 全身の強い倦怠感
- 全身の強い筋肉痛・関節痛
がありますので、これらの症状がある場合には胃腸風邪ではなくインフルエンザの可能性があります。
インフルエンザの場合は服用できない薬もありますので、むやみに市販薬を服用せずに、病院で検査をしてもらいましょう。
胃腸風邪の症状は?病院には必ず行った方がいいの?
「お腹からくる風邪」といわれる胃腸風邪ですが、嘔吐下痢症や感染性胃腸炎ともいわれます。
嘔吐下痢症といわれているように、主な症状は嘔吐や下痢ですが、ここではもう少し詳しくお話ししようと思います。
年齢や病原体(ウイルス・細菌)によって症状や治療法は変わってきますが、総合的に多くみられる症状には、以下のものがあります。
胃腸風邪の症状①突然の嘔吐
嘔吐は大抵1日で治まる。
半日くらいの間に何度も嘔吐することもあれば、1日1~2回の嘔吐が2~3日続くこともある。
嘔吐が治まった後も、胃の辺りのムカムカが1~2日間続くことがある。
胃腸風邪の症状②激しい下痢
下痢症状はほぼ必発で、軽度の軟便の場合もあるが、激しい下痢を伴う場合が多い。
水様便で、多量であることが多く、食べ物が消化されていないことが多い。
個人差があるが、たいていは3~4日、長いと1週間以上続くことがある。
胃腸風邪の症状③腹痛
腹部の違和感・不快感程度のものから、病原体によっては激しい痛みを伴うことがある。
胃腸風邪の症状④発熱
平熱のまま終わる人もいれば、病原体によっては40度を超す場合もある。
40度を超す高熱や38度以上の熱が長く続く場合は、重症化の可能性も。
胃腸風邪の症状⑤倦怠感、脱力感
下痢や嘔吐による脱水症状により、脱力感や倦怠感が生じることがある。
胃腸風邪の症状⑥頭痛
風邪と同じメカニズムで、胃腸風邪の場合にも頭痛を生じることがある。
胃腸風邪は突然の嘔吐から始まることが多く、嘔吐や吐き気などの口に近い側から症状が現れ、時間が経つとともに腹痛や下痢などの肛門に近い部分の症状が現れるようになるのも、特徴の1つです。
小児では嘔吐、成人では下痢の症状が強くみられますが、個人差が大きく、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者では重症化することもあります。
健康な成人の場合は2~3日で自然治癒することが多いですが、乳幼児や高齢者では下痢や嘔吐による脱水症状を生じることが多いため、なるべく早めに医療機関を受診することをおすすめします。
多くの場合は特効薬がなく対処療法による治療になりますが、早い段階から適切な対処をすることで、重症化するリスクを低くすることができます。
自然治癒することもある胃腸風邪ですが、
- 脱水症状によるふらつきがある場合
- 血便がある場合
は、危険は状態であるといえます。
このような場合は.救急外来を受診したり、救急車を呼ぶか迷った場合には緊急電話相談(♯7119)に電話したりしてみましょう。
胃腸風邪の種類はウイルス性と細菌性?症状や原因はどう違うの?
ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎の違い
胃腸風邪の約90%はウイルスが原因だといわれていて、細菌性胃腸炎よりも重症化するリスクが低く、ほとんどが自然治癒します。
ウイルス | 細菌 | |
抗生物質 | 効かない | 有効 |
別名 | 嘔吐下痢症 | 食中毒 |
流行時期 | 主に冬場 | 主に夏場 |
感染源となる食物 | 主に二枚貝など | 卵、肉、魚、未殺菌乳など様々 |
ウイルス性胃腸炎
≪ロタウイルス≫
・好発年齢
乳幼児をはじめ子供に多い(ほとんどの子供が4~5歳までに感染)
・感染力
非常に強い(ウイルス10~100個でも感染)
・流行
最近では3~5月ごろがピーク
・潜伏期間
約24時間
・症状
嘔吐、下痢、腹痛・他のウイルス性胃腸炎に比べて症状が激しい・39℃以上の発熱・白色の便が出ることがある・まれにけいれんや脳症を合併・2歳未満で重症化しやすい・通常1~2週間で自然治癒
・予防接種
あり(ロタウイルスワクチン)・生後6~24週の間に、4週以上あけて2回(1価ワクチン)
・死亡例
10例/年
≪ノロウイルス≫
・好発年齢
乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症
・感染力
非常に強い(ウイルス10~100個でも感染)
・流行
11月ごろから流行が始まり、1~2月がピーク
・潜伏期間
12~48時間
・症状
嘔吐、下痢、腹痛・38℃くらいの発熱・抵抗力が弱い場合重症化しやすい・1~2日で自然に治まる
・予防接種
なし
・死亡例
なし
〈感染性胃腸炎〉
平成12年~28年までの厚生労働省の資料によると、死亡例が多い細菌として
- 腸管出血性大腸菌…36名
- サルモネラ菌…10名
- ウェルシュ菌、セレウス菌、ブドウ球菌…1名
となっています。
≪腸管出血性大腸菌≫
病原性大腸菌の一種で、O157やO26など
・潜伏期間
3~5日
・原因となる食品
生の牛肉(ユッケやローストビーフ)・生レバー・サラダや野菜の浅漬け・お団子からも検出例あり
・症状
激しい腹痛・水下痢・血便・6~9%は、症状が出てから2週間以内に重篤な合併症
≪サルモネラ菌≫
・潜伏期間
5~72時間
・原因となる食品
牛・豚・鶏などの肉、卵
・症状
吐き気、腹痛、下痢、38℃前後の発熱・重症の場合、致死率は0.2~0.5%
胃腸風邪を早く治すための工夫!すぐにできる4つの方法を紹介
胃腸風邪になったことのある人は多いと思いますが、嘔吐や下痢が長引くとものすごく辛く、大変ですよね。
間違った対処をしたり適切な対処をしなかったりすると、なかなか良くならないどころか悪化することもありますから、注意が必要です。
ここでは、胃腸風邪を早く治すための4つの工夫を紹介します。
胃腸風邪を早く治すための工夫その① 1日1食で良い
体力をつけて早く治そう!と思う方も多いと思いますが、食欲があまりない時に食事を摂ることで、かえって腸の炎症が悪化する可能性が高くなります。
食欲が出ないのは、胃腸の症状がまだ回復していない証ですから、無理して食事を摂る必要はありません。
しかし、何も食べないでいると体力はどんどん消耗していきますから、食欲が出てきたら1日1回は食事をするようにしましょう。
おかゆや、くたくたに煮込んだうどんなどの消化の良いものがおすすめです。
胃腸風邪を早く治すための工夫その②スポーツドリンクや経口補水液をこまめに飲む
下痢や嘔吐が続くと、脱水症状を引き起こすリスクが高くなります。
脱水症状を放置すると危険な状態に陥ることもあるので、脱水症状にならないように気をつけることが大切です。
下痢が起きているときは大腸での水分吸収などができませんが、経口補水液は小腸で水分や栄養分を素早く吸収してくれるため、脱水症状に適しています。
胃腸風邪を早く治すための工夫その③下痢止めは飲まない
下痢が続いている時に下痢止めを服用する人もいると思いますが、下痢止めはウイルスや細菌の排出を止めることになり逆効果です。
下痢は辛いですが、下痢を止めるのではなく、体内のウイルスや細菌を体の外に出すことが先決です。
胃腸風邪を早く治すための工夫その④薬を服用するなら「整腸剤」と「正露丸」
ビオフェルミンなどの整腸剤は、下痢の抑制、ウイルス増殖の抑制、小腸の損傷軽減などの効果があるため、下痢止めではなく整腸剤を服用しましょう。
正露丸の主成分である「木クレオソート」には、殺菌効果があります。
また、木クレオソートは腸の動きを止めずに胃腸に作用する働きがあるため、ウイルスや細菌による腹痛には優れた効果を発揮します。
胃腸風邪は嘔吐や便から人にうつる?周囲への二次感染の予防法は?
胃腸風邪は汚染された食べ物から感染することがありますが、嘔吐物や便などの処理後に手洗い・手指の消毒が不十分だった場合、汚染された手指を介して感染することもあります。
家族が1人発症すると、家族全員にうつることもよくあるケースですから、うつさない・うつらないためにも、適切な感染予防に取り組みましょう。
胃腸風邪の二次感染の予防法①汚物の処理は念入りに行う
サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌は消毒剤に対する抵抗性が弱い細菌なので、エタノールやポピドンヨードなどの、市販されているほとんどの消毒剤が有効です。
しかし、ノロやロタなどのウイルスは消毒剤に対する抵抗性が強く、エタノールでは効果がありません。
胃腸風邪の原因が細菌なのかウイルスなのかはわからないことが多いはずなので、どちらにも効果のある「次亜塩素酸ナトリウム」の使用をおすすめします。
- 使い捨ての手袋やマスクを使いましょう。使用後はすぐに捨てましょう。
- 便や吐物はペーパータオルやぼろ布などで取り除き、ビニール袋に入れ、口をしっかり縛りましょう。
- 取り除けない分は、上にペーパータオルやぼろ布をかけ、50~100倍に薄めた次亜塩素酸ナトリウムを十分にしみこませ、良くふき取りましょう。
次亜塩素酸ナトリウムを使うと色落ちするので、柄物の衣服を消毒したい場合には、流しや桶に85℃以上のお湯を溜め、1分以上つけておきましょう。
カーペットなどの色落ちが気になる場合は、②の後に、ぼろ布などであて布をしてスチームアイロンを当てましょう。(85℃以上で1分以上)
胃腸風邪の二次感染の予防法②手洗い・うがいを徹底する
胃腸風邪の菌やウイルスは、のどや鼻から入り込んでくるので、手洗いうがいを徹底しましょう。
ノロウイルスやロタウイルスは非常に強いウイルスなので、外出先から帰った時や食事の前には念入りに手洗いするようにしましょう。
エタノールの消毒液ではなく、次亜塩素酸ナトリウムの消毒液で手指の消毒をすることをおすすめします。
自分で希釈液を作るのが面倒な人でも、ドラッグストアやホームセンターで購入することができます。
家庭に1つ常備していると、何かあった時にとても助かるので、用意しておくと良いと思います。
胃腸風邪の二次感染の予防法③入浴はシャワーのみ
症状がある間は、湯船からの感染も考えられますので、できればシャワーのみにしましょう。
湯船につかる場合は、家族の後で最後に入るようにしましょう。
浴槽に菌やウイルスが付着している可能性も考えられますので、掃除の後には次亜塩素酸ナトリウムで消毒をしておきましょう。
胃腸風邪の二次感染の予防法④手すりやドアノブの消毒
手洗いを徹底しているつもりでも、手を洗う前にドアノブを触ることもあると思いますので、ドアノブや手すりなどの良く触れる場所の消毒も行いましょう。
ウイルスや菌は思っているより遠くまで飛んでいるので、壁も消毒しておきましょう。
胃腸風邪の予防方法!胃腸風邪にならずに元気に過ごすためにできること
胃腸風邪はどこで感染するかわかりませんし、ぱっと見では誰が感染しているかもわかりません。
下痢や嘔吐がひどい時は横になっていても辛いですし、トイレから出ることができないなんてこともあると思います。
胃腸風邪にならないためにも、できる限りの予防に努めましょう。
胃腸風邪の予防方法①生の肉や貝を食べないようにする
ノロやロタウイルスは、カキなどの二枚貝、サルモネラ菌や出血性大腸菌は生の肉や卵が原因になります。
ユッケやローストビーフ・生レバー・生ガキなど、生ものや火の通りが甘いものは、なるべく食べないようにすることが感染予防になります。
鶏肉から感染する例も多く、市販の鶏肉の2~6割にカンピロバクターが付着しているともいわれているので、鶏肉を食べるときは、しっかりと火を通してから食べるようにしましょう。
鶏の刺身や鶏たたきなど、生の状態で食べることは感染のリスクがとても高いので注意が必要です。
胃腸風邪の予防方法②生活環境を整えよう
①適度な湿度を保とう
加湿器を使用するなどして、湿度は50~60%に保ちましょう。
②定期的に換気しよう
家の中にウイルスが漂っている可能性もありますので、定期的に換気しきれいな空気を保ちましょう。
③バランスの良い食事を
バランスの良い食事を1日3回しっかり摂り、免疫力をアップさせましょう。
④十分な睡眠を
睡眠不足になると免疫力は低下しますので、十分な睡眠をとりましょう。
⑤手洗い、うがいをしっかりと
外出後、トイレの後、食事の前など、こまめに行いましょう。
手指の消毒(次亜塩素酸ナトリウム)で感染のリスクをグッと下げることができます。
まとめ【胃腸風邪とはサヨナラ!しっかり対処して感染を防ごう】
今回は胃腸風邪の症状や予防法についてお話ししました。
適切な対処や予防を行い、胃腸風邪に罹らないように過ごしましょう。
<まとめ>
- 胃腸風邪には「ウイルス性」と「細菌性」がある
- ウイルスや細菌の種類によって、症状や感染源が違う
- ウイルスは冬場、細菌は夏場に多い
- 罹った時は適切な対処をすることで早期回復を
- 感染予防に努めることが大切
胃腸風邪は冬だけでなく夏にもかかる恐れがありますから、1年を通して感染予防に努めましょう。
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35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。