【爪の縦線】放っておいても大丈夫?爪に縦線ができる5つの原因とケア方法
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。
爪は、皮膚の一部が硬くなったもので、ケラチンとよばれる線維性のタンパク質でできています。
実は、指の先端部分には骨がありません。
人の体は、骨が支える仕組みになっていますので、骨がない部分は支えられません。
そこでこの部分を支えるために「爪」があります。
爪の役割はそれだけではありません。
爪は、指先を保護すると同時に、ものを掴むときに指を支える役割も担っています。
爪がなければものは掴めなくなります。
小さなものを掴むとなるとなおさらです。
このように日常生活を送る上でなくてはならない爪ですが、その表面に縦や横の線状の模様が入ることがあります。
縦線と横線ではその発生原因が異なり、横線の多くは爪が根元の部分で作られているときにぶつけたり挟んだりするなどのダメージや栄養不良などによって生じます。
一方、縦線の原因はそうではありません。
そこで今回は、爪の縦線ができる原因や、ケア方法をについてご紹介します。
【爪の縦線】爪の縦線ができる5つの原因
【爪の縦線原因】乾燥
爪は皮膚の一部ですが、皮膚のように呼吸している組織ではありません。
呼吸はしませんが、その表面からは水分が蒸発していくので、乾燥していきます。
しかし、自然な蒸発による乾燥であれば、問題はありません。
ところが、ネイルのカラーを落とすために使う除光液などを頻繁に使うと、爪が持っている脂分が失われてしまいます。
その結果、自然な蒸発以上に爪が乾燥してしまうため、縦線が生じるようになります。
これはあくまでも一例ですが、このような過度な乾燥が起こると、爪の縦線が生じます。
爪に縦線が現れる原因はこれ以外にもいろいろありますが、乾燥が原因で起こる縦線の割合は、比較的高い傾向が示されています。
【爪の縦線原因】病気
縦に割れた爪を、医学的には爪甲縦裂症(そうこうじゅうれつしょう)とよび、先端部が割れているケースが多いのですが、中には先端だけでなく、先端から根元まできれいに割れていることもあります。
爪甲縦裂症の原因は、爪の細胞に異常が生じることや、爪の根元の部分に腫瘍が生じることなどが挙げられます。
まずはステロイドの軟膏が処方されますが、ステロイド薬を塗っても改善してこない場合は、腫瘍ができている可能性が高いので、爪を取り除いて検査する必要があります。
その他、副腎皮質機能低下症という病気でも爪の縦線は生じます。
副腎皮質機能低下症は、アジソン病ともよばれる病気で、副腎皮質で作られるホルモンが足りなくなって起こります。
副腎皮質機能低下症の場合に爪に現れる縦線は、褐色の縦線です。
爪以外の症状としては、体重減少、疲れやすくなる、食欲が低下する、血圧が低下して立ちくらみを起こしやすくなる、吐き気や嘔吐などです。
なお、詳しくは後述しますが、悪性腫瘍によっても爪に縦線は現れます。
もし、爪に黒い縦線が現れ、しかも時間と共にどんどん太くなっていく場合は、悪性黒色腫という皮膚ガンの可能性があるので注意してください。
【爪の縦線原因】加齢
加齢、つまり老化によっても爪に縦線が現れることがあります。
加齢によって生じる縦線の代表は、爪甲縦条(そうこうじゅうじょう)という筋です。
人の老化は20代から始まります。
それに伴って爪甲縦条も20代ごろから生じます。
爪甲縦条は誰にでも生じる縦線ですが、若い頃は、薄くて細いためにあまり目立ちません。
爪甲縦条による縦線は、年とともに少しずつ太くなっていき、50歳を過ぎる頃から目立つ様になることが多いです。
爪甲縦条はあくまでも加齢によって目立ってくるだけの縦線です。
見えないだけで身体の老化が始まる20代ごろから始まっている縦線ですので、特に心配する必要はありません。
【爪の縦線原因】栄養不良
爪の横線が、爪が作られる過程での栄養不良で起こることは説明しましたが、栄養不足が縦線の原因となることもあります。
爪の縦線に関係する栄養素としては、ビタミンB群が挙げられます。
具体的にはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、ビオチンなどです。
ビタミンB群の不足は、爪に縦線を生じさせます。
ビタミンB群の不足を引き起こしかねない原因としては無理なダイエットや食べ物の好き嫌いが挙げられます。
これらは、爪の縦線の原因となり得ますので注意してください。
【爪の縦線原因】睡眠不足やストレス
睡眠時間が不足したり、ストレスがたまったりして、疲れた状態が続くと、爪の成長にも悪影響を及ぼします。
その結果、爪に縦線が生じるようになります。
爪の縦線だけでなく、横線が生じたりや爪の成長が遅くなったりすることもあります。
【爪の縦線】爪にも癌ができる!?こんな爪に要注意
爪は皮膚の一部ですので、爪に生じるガンとしては、皮膚に関係して発生する皮膚ガンが挙げられます。
皮膚ガンの中でも爪に起こりやすいのが、悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)というタイプのガンです。
悪性黒色腫とは言わずに、メラノーマとよばれることもありますが、呼び方が違うだけで両者は同じガンです。
【爪の縦線】悪性黒色腫とは?
夏場など、強い日光に当たると日焼けをします。
これは皮膚にメラニン色素があるからで、メラニン色素を作り出す細胞をメラノサイトといいます。
このメラノサイトという細胞の遺伝子に異常が起こり、ガン化した病気が悪性黒色腫です。
悪性黒色腫は、皮膚だけでなくお口の中など粘膜にも生じます。
【爪の縦線】悪性黒色腫の症状
メラニン色素を作り出すメラノサイトのガンなので、皮膚に濃い黒色のシミのような模様が現れます。
この黒いシミは、一見するとホクロの様に見えますが、ホクロと異なり時間の経過とともに徐々に大きくなっていく上、周囲との境界がギザギザとしていて分かりづらいです。
ホクロなら触っても硬くはありませんが、悪性黒色腫の場合は、ホクロと異なり、一部、もしくは全体が硬くなっています。
【爪の縦線】爪の悪性黒色腫が発症する箇所
爪に悪性黒色腫が生じるといっても、爪全体に悪性黒色腫が生じるわけではありません。
爪の根元を見てみると、白い三日月状の部分が見えると思います。
この部分を爪母(そうぼ)といい、新しい爪を作り出す大切な役割を担っています。
爪の悪性黒色腫は、この爪母に生じます。
【爪の縦線】爪の悪性黒色腫の症状は?
爪に現れる悪性黒色腫の症状は、皮膚の悪性黒色腫とは少し異なります。
まず、爪の表面に色素線条(しきそせんじょう)とよばれる黒っぽい縦線が現れます。
この縦線は、初めのうちは見えるか見えないかというほどの細さですが、6ヶ月〜1年ほどの間に、どんどん濃くなっていきます。
そして、幅も太くなり広がっていきます。
さらに進行していくと、爪が割れるなど変形したり、爪の周囲の皮膚が黒くなってきたりすることもあります。
爪も皮膚の一部ですが、皮膚に生じる悪性黒色腫と爪のそれとは症状が異なることがわかっていただけると思います。
【爪の縦線】爪に生じる悪性黒色腫は多いの?
悪性黒色腫は、足の裏の皮膚に生じるケースが大半です。
爪に悪性黒色腫が生じる頻度は足の裏ほどではありませんが、ないわけではありません。
爪の悪性黒色腫は進行すれば、治療のために指を切断しなければならないこともありますが、早い段階で見つかればその限りではありません。
上記の様な症状が現れるなら、早めに医療機関を受診した方がいいでしょう。
なお、縦線が全ての爪に現れているなら悪性黒色腫である可能性は低いと考えられますし、ガン治療で抗癌剤を使っているときにも縦線が生じることがあります。
【爪の縦線】いつまでも美しく保つためのケア方法
【爪の縦線ケア方法】乾燥を防ぐ
爪の過度な乾燥は、爪に縦線を生じさせる原因のトップにランキングされます。
そこで爪の乾燥を防ぐ、つまり爪を保湿することが爪の縦線を防ぐためにとても大切となります。
爪を保湿するためには、保湿剤を使うことが効果的です。
爪用の保湿剤として、爪専用のオイルが市販されています。
商品名としては、ネイルオイル、キューティクルオイル、爪オイル、ネイルケアオイルなどいろいろ呼ばれていますが、これらは呼び方が違うだけで、本質的にはすべて同じものです。
もし爪用のオイルが手元にない、もしくは購入できないような場合は、ハンドクリームを代用してみるのもいいでしょう。
ハンドクリームを使って爪を保湿するときは、ハンドクリームを手に塗る際に、爪の周囲の皮膚にまでしっかりと塗り込んでください。
これだけでも爪の保湿効果が期待できます。
このように日常的に爪をまめに保湿して、爪の乾燥を防いで、縦線を予防しましょう。
【爪の縦線ケア方法】栄養バランスを整える
ビタミンB群が足りなくなると、爪に縦線が生じることは前述しました。
そこで、ビタミンB群の豊富な食べ物を積極的に食べましょう。
食事を通してビタミンB群の不足を解消するのも爪を美しく保つための方法の一つです。
ビタミンB群が豊富に含まれている食材としては、肉類では豚肉やレバー、うなぎ、野菜類ではナッツや緑黄色野菜、落花生、果物類ではバナナ、魚介類ではイワシやサンマ、マグロ、カツオ、貝、そして牛乳などが挙げられます。
こうした食材を意識して食べるようにするといいでしょう。
【爪の縦線ケア方法】サプリメントを使う
食べ物からのビタミンB群の摂取に不安のある方は、ビタミンB群の含まれるサプリメントを使ってみるのもいいでしょう。
サプリメントは、健康食品として取り扱われていますので、医師の処方箋も必要なく、ドラッグストアやスーパーマーケットなどで手軽に購入できます。
食事を通してビタミンB群を摂取するのを基本に、サプリメントを併用するのもいでしょう。
【爪の縦線ケア方法】生活習慣の改善
日常の生活習慣の改善も、爪のケアには大切です。
睡眠時間の不足やストレスのたまりすぎは、爪の美容の大敵です。
まず、睡眠時間をチェックして、あまり眠れていないという方は睡眠不足を解消するようにしてください。
なお、平日はあまり寝ないで週末にたくさん寝る、いわゆる寝だめは睡眠不足の解消には効果はありません。
毎日の睡眠時間の確保が、睡眠不足の解消には欠かせませんのでご注意ください。
現代社会を生きる上で、ストレスなく過ごすことはほぼ不可能です。
ストレスをためないようにすることすら、ストレスとなりうるからです。
そこで大切なのは、ストレスをためないことではなく、ストレスを発散させることです。
何かしらの趣味を持つ、温泉やサウナに入る、軽い運動を習慣づけるなどして、仕事や日常生活でたまりがちなストレスを適度に発散させるようにしましょう。
【爪の縦線ケア方法】つけ爪やネイルをやめる
爪は、呼吸はしていませんが、その表面からは水分を蒸発させています。
つけ爪やネイルは、爪のもつ水分蒸発という自然の働きを邪魔してしまいますので、爪が弱くなる原因となります。
つけ爪やネイルをやめる、減らすのも爪のケアのひとつです。
除光液を使いすぎると、爪の表面の脂分を奪ってしまいますので、除光液の使用もやめる方がいいでしょう。
爪の縦線は爪からの何らかのサインです!
今回は、爪の縦線ができる原因や、ケア方法をについてご紹介しました。
爪は皮膚の一部で、指先を守ったり、支えたりする大切な組織です。
私たちがものを掴めるのも、爪があるおかげです。
爪の縦線は、爪の乾燥や病気などのサインです。
今回ご紹介したことを参考に爪のケアして、縦線を防いで爪を大切にしてください。
- 爪に縦線が現れる原因は、爪の過度な乾燥や病気、加齢などがある
- 悪性黒色腫によって生じる縦線もあるので要注意
- 日常の生活習慣や食習慣も爪の縦線に関係している
- 保湿や生活習慣・食習慣の見直しは爪の縦線予防に効果的
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