【花粉症対策の食べ物】ヨーグルトや乳酸菌が花粉症に効果的って本当?【調査結果を元に解説】
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
35年の薬剤師キャリアを活かし、「健康を知り尽くした調剤マスター」としてテイコク製薬社の調剤業務に従事。
いまや日本人の3人に1人は花粉症と言われています。
毎年花粉症の時期が近づくと憂鬱になるという方は多いですよね。
薬を飲めば少し楽になるけど、眠気や口の渇きなどの副作用が気になったり。
そこで、花粉症に効果があると言われている食べ物や飲み物について、本当に効果があるのか、論文で挙げられている研究結果を元に解説します。
今回取り上げている食べ物は、ヨーグルトや乳酸菌飲料、そして雲南紅豆杉です。
【調査①】ヨーグルトは本当に花粉症対策に効く食べ物なの?
日本を含む先進国において花粉症の患者さんは年々増加傾向にあります。
なぜ昔よりも現代の方が花粉症になる人が多いのでしょうか。
その要因のひとつに「衛生仮説」があります。
少子化や、清潔志向、衛生環境の向上などにより、乳幼児期に微生物との接触機会が少なくなると微生物からの刺激を十分に受けられず、免疫の発達が不十分となるため、結果としてアレルギーの発症を引き起こしやすくしている、という考え方です。
またそれに関連して、最近ではアレルギーの発症に腸内細菌が深く関わっていることがわかりました。
2006年に発表された論文によると、ヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取有無と、アレルギーの発症に関連があることが報告されています。
【調査方法】
和歌山県内の中学1年生702名を対象に、ヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取の有無と、アレルギー発症の関係、及び、血中IgE値の比較(IgE:免疫グロブリンの一種で、一般的にこの値が高いとアレルギーであると判断される数値)
【調査結果】
ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取している生徒たちは、摂取していない生徒と比較して、各種アレルギー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎)を発症している割合が少なく、また血中のIgE値もより低かった。
この結果から、ヨーグルトや乳酸菌に含まれる「プロバイオティクス」、いわゆる善玉菌とも呼ばれる、人体にとって良い働きをする生きた微生物が腸内環境を改善して免疫力が高まることで、アレルギー疾患の発症を抑制していると考えられます。
しかしながら、この論文の中では、どの種類のプロバイオティクスがより有効であったのかという点までは調査がされていません。
ひとくちにプロバイオティクスと言っても、様々なものがあります。
そこで花粉症の症状改善に期待できると言われているプロバイオティクスについて詳しくご紹介します。
L-55含有のヨーグルトによる花粉症状の改善効果はどのぐらいあるの?
日本人の花粉症の原因でもっとも多いと言われているスギ花粉ですが、このスギ花粉による症状を緩和する効果が高いということがわかったのが、L-55株です。
L-55は日本人の赤ちゃんから発見されたヒト由来の乳酸菌で、胃酸に強く、生きて腸まで届くという特徴があります。
マウス実験ではアレルギーの緩和効果が認められていますが、花粉症に対しての効果はどのように有効なのでしょうか。
L55含有ヨーグルト飲用による花粉症緩和について2012年に報告された、L-55株含有ヨーグルトのスギ花粉症に対する緩和効果の調査があります。
【調査方法】
岡山県内の花粉症と診断された人を2つのグループに分け、一方はL-55株含有ヨーグルト、もう一方は非含有ヨーグルトをそれぞれ200mlずつ、時間は指定せずに飲用してもらい症状を比較
【調査結果】
調査期間の13週間の間で、花粉の飛散量が「多い」〜「非常に多い」場合は、症状の緩和効果は十分ではないが、「やや多い」程度では緩和効果が大きいことが実証された。
つまりL-55株を含むヨーグルトは「治療薬ほど強力ではないが、花粉症症状に対する抑制効果を有している」と考えられます。
また、L-55株と治療薬を併用した場合、症状を効果的に軽減、あるいは使用薬剤を減らせる可能性があるということにも着目されています。
L-92含有の食品による花粉症状の改善効果はどのぐらいあるの?
続いてL-92株についても花粉症に対しての効果が期待できます。
L-92株とは、血中IgE値の上昇を抑え、抗アレルギー作用が期待される乳酸菌として利用されてきた背景があり、実際にアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎等の症状緩和効果が認められています。
花粉症に対しての効果はどのようなものでしょうか。
こちらは2018年に実施されたL-92株の花粉症に対する調査です。
【調査方法】
過去2年以上にわたりスギ花粉の症状を自覚している被験者を2つのグループに分け、一方にはL-92株を含むタブレット食品、もう一方にはL-92株を含まないプラセボ食品を12週間毎日摂取してもらい、「くしゃみ」・「鼻水」・「鼻づまり」・「目のかゆみ」・「涙目」の程度の比較と、血中のIgE抗体量を測定
【調査結果】
1)L-92株摂取グループは、非摂取グループと比較して、くしゃみの回数や鼻水、鼻づまり、目のかゆみ等の症状のスコアが低く、花粉症の症状緩和に有効であると示唆された
2)12週目の血中のIgE値を比較すると、L-92株摂取グループは、非摂取グループよりもスギ特異的IgE値及びヒノキ特異的IgE値が低くなった
このことから、L-92株を含む食品の摂取が、体内の免疫系に作用して、花粉症の症状を緩和している可能性を示唆しています。
- 日常的にヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取している人はアレルギー発症の確率が低い
- L-55株やL-92株の乳酸菌を含むヨーグルトや乳酸菌飲料などの食べ物の方がより花粉症に効果的という結果が出ている
【調査②】紅豆杉は本当に花粉症対策に効く食べ物なの?
最後に、花粉症に効き目があると言われている紅豆杉(ことすぎ)について、その効果を調べてみました。
紅豆杉(ことすぎ)とは
中国の雲南省などに生育している高山植物で、日本の富士山よりも高い海抜3300m〜4100m付近に群生しており、平均樹齢は3000年という非常に生命力の強い樹木です。
2200年以上前の秦の始皇帝時代から、不老不死のための貴重な王族専用仙樹として重用されてきた歴史があり、日本には7世紀頃、隋の王室から献上されて伝わったといわれています。
この雲南紅豆杉について、これまではほとんど科学的研究が行われてきませんでしたが、最近になって様々な基礎研究が行われ、関節リウマチに対する効用、血糖の降下作用、肝保護作用、抗骨粗鬆症作用、抗アレルギー作用などがあることが報告されています。
では、花粉症に対しての効果はどうでしょうか。
紅豆杉の花粉症に対する即効性についての論文があります。
【調査方法】
2002年から2003年の各年2月から4月まで東京都青梅市の診療所にて、33名の花粉症と診断された患者さんが対象
雲南紅豆杉から抽出したお茶を飲んでもらい、飲む前の自己評価を基準として、飲んでから40分後、及び、2時間後の症状を比較
【調査結果】
雲南紅豆杉を飲んでから40分後には、「くしゃみ」・「鼻水」・「鼻づまり」・「鼻・喉のかゆみ」・「目のかゆみ」・「涙目」の6項目すべてにおいて、症状が改善したという結果。
また、飲んでから2時間後では「くしゃみ」・「鼻水」・「目のかゆみ」・「涙目」については引き続き症状が改善傾向にあるのに対して、「鼻づまり」・「鼻・喉のかゆみ」は、飲む前と比較してあまり改善しているとはいえないという結果。
実施された場所が診療所内なので、屋外と比べると相対的に花粉の飛散量は少ない状況での調査にはなっていますが、雲南紅豆杉を飲用して症状が楽になったと主張する患者さんが多く、特に飲用40分後には目の症状が治まったという声が多かったようです。
これらの結果から、雲南紅豆杉を飲むと1)花粉症の症状に対する即効性、2)特に目の症状に対しての効果が大きい、この2つが期待できる可能性が高いといえます。
せっかく買うなら本当に花粉症に効果的な食べ物を選ぼう
ヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれるプロバイオティクスが腸内環境を改善して、免疫力をアップさせ、花粉症のつらい症状を抑えてくれる可能性があること、また雲南紅豆杉の花粉症に対する即効性が期待できることなどがわかりました。
特に、ヨーグルトや乳酸菌飲料はスーパーやコンビニなどどこでも手に入るので、日常の花粉症対策に取り入れてみてはいかがでしょうか?
また、これら以外にも花粉症対策の食べ物は数多く紹介されていますが、せっかくなので正しい知識で本当に効果的かを見極めた上で取り入れましょう。
ヨーグルト・乳酸菌飲料摂取によるアレルギーの発症抑制 : 疫学調査から
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/55/11/55
L-55含有ヨーグルト飲用のスギ花粉症に対する臨床効果の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/61/5/61
L-92含有食品摂取による花粉症有症者に対する影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ffr/15/0/15_42/_pdf/-char/ja
補完食品「紅豆杉」の花粉症に対する即効性
file:///C:/Users/USR/Downloads/20170308.pdf
テイコク製薬社調剤店舗「薬剤師」
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