3大夏風邪の1つでもある手足口病は、主に幼児がかかる夏風邪として周知されていますが、実は大人も感染することはご存じですか?
大人が感染した場合は重篤化する場合もあるので注意が必要です!
手足口病に大人が感染した場合の症状や感染経路、対処方法や予防策についてご説明いたします。
夏風邪の1つ、手足口病ってどんな病気?大人も感染する?
風邪と聞くと、寒い時期にかかるもの、と考える方は多いのではないでしょうか?
しかし実は、熱い夏でも風邪にかかります。
夏にかかる風邪は、ウイルスに感染することで発症し、代表的な病気としては「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱(咽頭結膜熱)」の3種類があります。
夏場に流行し7月頃に感染のピークを迎えるウイルスで、感染者のほとんどが5歳未満の小児です。
代表的な夏風邪の1つである手足口病とは、手・足・口の中に痛みをともなうやや盛り上がった、米粒大の大きさの発疹が表れ、この発疹が水泡化することもあります。
口の中にできた発疹や水泡は口内炎と同じような症状で、水泡がつぶれた後は食事や飲み物を受け付けられなくなることもあり、脱水症状を引き起こす可能性があり注意が必要です。
そして、口に発疹ができた場合は口内炎だと勘違いすることが多く、流行する季節に口内炎ができた場合は経過観察するとともに、手足に発疹がないか確認しましょう。
早期発見と注意することで、感染拡大を防止できますし、重症化する前に対処できます。
しかし、手足口病は、感染してから数日間は何も症状が表れない潜伏期間が2日~7日間ほど続き、潜伏期間中はウイルスが体内で増殖を繰り返しています。
潜伏期間中は一般的には感染しないといわれています。
その後、急性期を迎え発症すると一気に感染能力が高まり、他の人にうつします。
発病すると約3割の確率で発熱をともないますが、子どもが感染した場合は高熱が続くことはほとんどありません。
腹痛や下痢に加えて発熱や鼻水などの風邪に似た症状を伴うこともありますが、その症状の大半は約1週間前後で治ります。
しかし、髄膜炎や脳炎などの合併症を引き起こすこともありますので、感染の際は注意深く見守る必要があります。
治癒後1か月~2か月後に手足の爪が剥がれることもありますが、新しい爪が生えてきますので特に処置は必要ありません。
症状が治まってもウイルスの排出は2週間~4週間程度便の中に排出されますので、感染拡大を防止する対策が必要です。
手足口病は、免疫力がまだ少ない幼児期に感染することが多いですが、そのウイルスに免疫を持たない場合大人も感染します。
特に大人が感染した場合は、重症化するケースが多いです。
手足口病に大人が感染した場合の主な症状は?
初期症状は風邪のような、倦怠感や関節痛、頭痛や喉の痛みを感じ始め、その後口や手足に発疹が出始めます。
大人の場合も子どもと同様に、喉の腫れ、口内炎、手のひらや足の裏の発疹、水ぶくれの症状があらわれます。
最近の傾向では、手足口以外にも、お尻や膝、肘にも症状が出るようになりました。
手足口病に大人が感染すると、子どもに比べ症状が重く出やすい傾向があり、発疹は子どもに比べて強く表れ、痛みも強くなります。
足裏に多く症状が出ると、歩行が困難になるほどの痛みを伴うケースがあります。
また、大人の場合はインフルエンザにかかる前のような全身倦怠感と悪寒、関節痛や筋肉痛などの症状や嘔吐・下痢、手足のしびれのような症状が出たり、高熱が何日か続くこともあります。
発症後の痛みが治るまでには10日ほどかかり、水ぶくれが完全に消えるには子どもの約2倍の期間、2~3週間程度が必要です。
大人が手足口病に感染する経路は?
感染経路は、飛沫感染や接触感染、糞口感染が主な原因です。
①飛沫感染
手足口病に感染した人が咳やくしゃみをすることで、空気中に飛沫したウイルスを他の人が吸い込むことで感染します。
②接触感染
子どもに多いのは、幼稚園や保育施設などでお友達と遊ぶ際、子ども同士の距離が近く濃厚な接触が生じやすいです。
指をしゃぶった手でおもちゃを触ったり、手をつなぐと他の人に感染します。
感染力が強いウイルスなので、幼稚園や保育施設で集団感染することがあります。
③糞口感染
特に大人が手足口病に感染する経路の多くは、子どもが感染しおむつ替えなどの時に便から感染するケースが多いです。
手足口病のウイルスは長期間便からウイルスが排出されるため、親御さんはオムツ替えやトイレの手伝いをする場面では十分気を付ける必要があります。
また、唾液のついた衣類からうつることもあります。
通常の洗濯でもウイルスを防ぐことが可能ですので、洗濯はこまめに日に当てて乾かしましょう。
子どもがいなくても、体調が悪くて免疫力が低下していると外出先で感染することもあります。
手足口病に大人がかかったら重症化する?なぜ大人には感染しにくいの?
大人が手足口病に感染しにくい理由は、過去そのウイルスに対する免疫を獲得したことにより感染しなくなります。
しかし1度かかって免疫ができたとしても、何度も発症するのは、手足口病を引き起こすウイルスの種類が何種類か存在するので、1種類だけかかってもまた別のウイルスであれば感染するからです。
インフルエンザウイルスもA型にかかっても、B型にかかることがあるのはウイルスの種類が2種類あり、A型の免疫ができてもB型の免疫は持たないのでもう一度感染するのと同じことです。
手足口病はワクチンもなく、手足口病を治す薬はありません。
発疹が痛くてどうしようもない時に痛み止めを飲んだり、発疹に粘膜保護剤の軟膏を塗ることもあります。
そして、高熱が出たときに解熱剤で熱を下げるという応急処置だけで、ウイルスの対処療法はありません。
特効薬がないのであれば病院に行っても仕方ないと思われがちですが、稀に重症化し「髄膜炎」「小脳失調症」「脳炎」といった中枢神経系の合併症を引き起こすケースもありますので、自己判断の思い込みは危険です。
また他に、「心筋炎」や「神経原性肺水腫」「急性弛緩性麻痺」にかかる可能性もありますので、高熱が続いたり、頭痛や嘔吐などが見られた場合はすぐに医療機関を受診してください。
手足口病のウイルスの中にエンテロウイルス71型と呼ばれる種は、他のウイルスに比べて中枢神経系の合併症を引き起こす確率高いです。
大人が感染した場合は、子どもと同様の症状がより強く表れ、完治するまでには約2倍の期間を有します。
大人が手足口病にかかった場合は、内科を受診しましょう。
大人が手足口病の予防をするためにはどうすればいいの?
手足口病に感染しても、治療に役立つ薬がない上に大人が感染すると症状が強く表れますので、予防対策を強化することが大切です。
手足口病の子どもを看病する際は、十分に注意
子どもが咳をしているようであれば、室内でもマスクをし、看病した後には必ず手洗いうがいをすることが大切です。
ウイルスは便の中にも出ますので、オムツを交換した後は、いつも以上に手洗いをしっかりします。
完治後もウイルスは便の中に排出され続けますので、完治後も1か月前後は取扱には注意が必要です。
正しい方法で手洗いをする
手はウイルスを運ぶ最大の原因ともなるので、感染防止のためにも手洗いが最も有効的です。
手指の衛生を保つためには、まず手に汚れが付着していると消毒薬が浸透しないため、石鹸と流水で手洗いを行います。
その際、手のひらだけでなく、手の甲や指と指の間、親指をもう片方の手で包み込み揉み洗いを行って下さい。
指先はもう片方の手のひらで揉み洗いをし、手首まで丁寧に洗い、最後に流水でよくすすぎましょう。
タオルや食器類を共有しない
初めは清潔なタオルでも、感染した人がそのタオルを使うことでウイルスが付着します。
湿ったタオルをそのまま放置すると、ウイルスは増殖し、別の人がそのタオルを使用した際にウイルスが手に付着します。
手を介して、口にウイルスが入ると手足口病に感染し、家庭内感染を引き起こします。
食器類も共有することで感染しますので、手足口病の感染を予防するためには共有をしないことが大切です。
トイレやキッチンのタオルは共用にする家庭は多いと思いますが、感染経路を断つためには個々でタオルを使用しましょう。
家の中でもマスクで感染予防を
子どもはまだウイルスの怖さを理解できませんので、親御さんが手洗いを促しても忘れたり、面倒くさがったりします。
その場合はマスクをつけておくと安心です。
マスクをつけておくことで、口にウイルスが付着することも防止できますし、子どものくしゃみから飛沫したウイルスを吸い込む可能性もありません。
手足口病に大人が感染した場合の対処方法
大人が手足口病に感染した場合、前述の通りその多くが重症化しますがウイルスに効く薬はありません。
発疹が痛い場合や高熱が続く場合は内科を受診し、解熱剤や鎮痛剤で痛みや熱を下げる対処方法のみで、自己治癒力を高めることが大切です。
自己治癒力を高めるためには、消化に良い食事と睡眠をしっかり取りましょう。
体を動かすのがつらい時は、無理をして入浴せず安静にします。
無理をするとかえって疲労し、免疫力を低下させることでウイルスに対抗する力が弱まります。
水膨れのような発疹は、かさぶたにならずに完治しますが、ひどい場合は数か月症状が残る場合もあります。
症状が長引いても水膨れの跡が残ることはありませんので、心配する必要はありません。
ステロイド剤を使用すると手足口病の症状を悪化させることがありますので、注意が必要です。
妊婦が手足口病にかかった場合のはっきりしたデータはありませんが、大人の処置と同様にし、慎重に経過観察を行うだけで過度に心配する必要はありませんが、早めに医療機関で受診するようにしましょう。
また、授乳期間中にお母さんが感染した場合赤ちゃんにも感染する可能性があります。
この場合は、発症から1週間を目安に授乳を控え、かかりつけの産婦人科や小児科で相談することをお勧めします。
口の中の水泡は痛みを伴うため、うどんやゼリーなど喉越しのよい食べ物や、オレンジジュースなど刺激の多いものは避け、お水やお茶で水分を摂取します。
熱い・しょっぱい・酸っぱい・辛いものは、刺激があり痛みの原因になりますので控えましょう。
痛くて食べられない場合は、脱水症状になる可能性がありますので経口補水液などで水分を補給しましょう。
口の中の乾燥や尿量の減少が見られた際は、脱水症状を引き起こしている可能性があるので、医療機関で点滴による治療が必要です。
手足口病は、会社への出勤停止を義務づける法律は定まってはおらず、発熱や症状がなくなり体調が回復すれば出勤できますが人から人へ感染する病気ですので、感染を予防する配慮は必須です。
こまめな手洗い・うがいと、飛沫感染を防ぐためにマスクを着用し、タオルや食器類の共用を避けることが大切です。
治癒後も2週間~1か月程度は便や鼻水にウイルスが含まれるため、感染予防に気を抜かず続けましょう。
また、自己の免疫力を高めることは早期治癒や予防につながります。
免疫力が高ければ、ウイルスが体内に侵入した場合でも、対抗する力が強く軽傷ですみます。
長時間の日焼けは免疫力低下につながりますので、夏のレジャーでもある海やプールに行く際は、日焼け対策は万全に行いましょう。
睡眠をしっかりとる
寝不足は睡眠力の低下につながりますので、寝苦しい熱帯夜の夜にはエアコンを使うなど快適な状態にします。
雨が降り湿度が高い場合は除湿機能を使うなどして、良質な睡眠がとれる環境づくりを心掛けましょう。
夜は明るすぎない照明を心掛け、パソコンやスマホなどのブルーライトを発する電子機器の使用は控えましょう。
睡眠ホルモンは朝の光を浴びてから、14時間~16時間後に分泌が始まり、深夜2時ごろに最も増えるといわれていますので、この時間を目安として良質な睡眠をとるように心掛けることが大切です。
また、入浴は布団に入る1時間~2時間前までにすまし、40度前後のぬるま湯に約10分~30分浸かることがベストな入浴法です。
夏場はシャワーですます方が多いですが、エアコンなどで冷えた体を温めることで緊張した筋肉をほぐすリラックス効果もあります。
女性は生理周期のホルモンバランスの乱れに注意
生理周期にホルモンのバランスが乱れ、女性の体調やメンタル面に影響を及ぼします。
生理前は免疫力が下がり、生理後は免疫力が上がりますので、生理前にはウイルス感染のリスクが高くなります。
そして、月経前の1週間にはメンタルが不安定になり睡眠障害や倦怠感が表れ自律神経のバランスが乱れます。
積極的に体を動かし、睡眠をしっかり取ることで自律神経やホルモンバランスを整えましょう。
暴飲暴食は控えて
夏場は熱いからと言ってビールや冷たい飲み物ばかり飲みますが、胃腸に負担をかけると免疫力を生み出す腸が疲れることで免疫力を低下させます。
暴飲暴食は控え、バランスの取れた食事を適量とるようにしましょう。
まとめ【手足口病に大人がかかったら大変!予防策は万全に】
有効薬や予防注射がありませんし、大人が発症すると症状が重くなる傾向にある、手足口病には感染しないためのしっかりとした予防策と自己治癒力を高めることが大切です。
- 小児に多く感染する手足口病ですが、免疫力を持たない大人にも感染可能性がある。
- 子どもと同じような症状が表れ、大人の場合は手足口病の症状が強く出て長引く。
- 手足口病の感染経路は飛沫感染や接触感染、糞口感染によりその多くは子どもから感染する。
- 大人が手足口病に感染するリスクが低いのは、ウイルスに対する免疫があるから。
- 手足口病の予防策は、手洗いの励行とタオルや食器類の共用をしないこと。
- 感染した場合は、睡眠と栄養をしっかり取り免疫力をアップさせる。