私たちの寿命は延び続けて、今では「人生90年」に手が届こうとしています。
しかし一方で、自立した生活を送れる期間(健康寿命)が、平均寿命より男性は約9年、女性は約12年も短いことが分かりました。
これは支援や介護を必要とするなど、健康上の問題で日常生活に制限のある期間が平均で9~12年もあるということです。
長い人生、いつまでも元気に過ごすためには「健康寿命」を延ばすことが必要なのです。
そこでこの記事では、健康寿命を延ばすために心がけたいことについてご紹介します。
健康寿命を短くしてい原因を知ることが、最後まで自分らしく生きるために大切です。
「健康寿命」と「平均寿命」の違いはなに?
メディアのニュースなどでたびたび報道される日本の平均寿命ですが、日本は長寿大国だということは知っているけれど、そもそも「平均寿命って何を意味するの?」と思ったことはありませんか?
平均余命や健康寿命という言葉を耳にすることもあって、それぞれの意味の違いもよくわからないですよね?
平均寿命とは、その名の通り生まれてから死ぬまでの寿命の事です。
戦後、日本の平均寿命の推移は右肩上がりで、世界的に見ても高いことがわかっています。
現在日本人男性の平均寿命は80.98歳、日本人女性の平均寿命は87.14歳です。(厚生労働省「平成28年簡易生命表」)
一方「健康寿命」とは元気に自立して過ごせる期間の事をいいます。
例えば生きていても車いす生活や、ベッドに寝たきりの状態で、日常生活に介護の補助が必要な場合はこの期間から除かれます。
明治時代、日本人の平均寿命は40代前半でした。
男女共に50歳を超えたのは1947年頃、75歳を超えたのは1986年です。
寿命は短期間で30年以上と飛躍的に延びました。
明治時代や昭和の時代には自立して過ごせなくなる機関と、平均寿命の差はほぼ存在しなかったと言えるでしょう。
健康寿命を延ばすことが重要視され始めたのは、平均寿命が75歳を超えた高度経済成長期以降です。
現在日常生活に制限のある期間は男性で8.84歳、女性で12.35歳となっておりその数字は10年近いものになっています。(厚生労働省「第11回健康日本21(第2次)推進専門委員会)」資料(平成28年)より算出)
「健康寿命」と「平均寿命」に差ができる理由
0歳児が長く生きられる環境になるには、公衆衛生の充実や医療体制の高度化といった社会の成熟が欠かせません。
そうした意味から、平均寿命が伸びることは大いに歓迎されてきました。
しかし、そのような成熟社会であるからこそ「単に寿命が長ければ健康か?」という議論が持ち上がり、結果として誕生したのが「健康寿命」という概念です。
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指すこれは、計算方法が複雑で、ある程度の人口規模が必要とされています。
また、「健康、あるいは不健康な状態というものは、本来は連続的であって厳密に健康と不健康に二分できるものではない」といった意見も少なくないようです。
自立した生活を送れる期間「健康寿命」が、平均寿命より男性は約9年、女性は約12年も短いことが分かりました。
これは支援や介護を必要とするなど、健康上の問題で日常生活に制限のある期間が平均で9~12年もあるということです。
この差はなぜ生まれるのでしょうか?
その理由に、医療制度が充実していることが挙げられます。
日本は国民皆保険制度があり、また高齢者に向けた医療制度が整備されていることで、高齢者は健康診断を受け、問題があれば治療を受けることが可能です。
これまででは救えなかった病気や怪我でも、現在では治療、介護を受けながら生活できている方が増えています。
こういった、医療技術や延命治療の発達が2つの寿命に差を生じさせ「健康ではない期間」を縮まりにくくしている原因と言えるでしょう。
また、健康寿命が延びているものの「健康ではない期間」がなかなか縮まらないという状況は、家族の協力や介護を必要とする高齢者が依然として多い状況であると言えます。
健康寿命が長い都道府県ランキング
健康寿命が長い都道府県についてご紹介します。
2016年の健康寿命ランキングを見てみると、長いのは男性で1位山梨県(73.21歳)、2位埼玉県(73.10歳)、3位愛知県(73.06歳)、女性では1位愛知県(76.32歳)、2位三重県(76.3歳)、3位山梨県(76.22歳)です。
一方で短いのは、男性では秋田県(71.21歳)、女性では広島県(73.62歳)となっています。
全体的な傾向を見てみると、男女ともに健康寿命が長いのは気候が安定している所で、逆に健康寿命が短い都道府県は天候が安定しない・寒い地域(東北)という特徴がありそうです。
人は生活習慣病をきっかけとして様々な病気にかかることが多い事が知られていますが、生活習慣病の原因として大きいのは「喫煙」と「高血圧」です。
高血圧を招くのは、日ごろの食生活です。
東北地方の食事で特徴的なのは塩蔵のものが多く、塩辛い食事が多いことです。
日常的に塩分を過剰に摂取することで高血圧が誘発され、結果病気にかかりやすくなり、健康寿命を短くする結果につながっているのではないか?と分析できます。
また、もう一つ注目したいのが気候と運動習慣の関係です。
東北、雪国のような厳しい気候だとどうしても冬場は寒くて外出の頻度が減ります。
さらに地方では生活に車が必須なため、都会と比べ歩数に差が出てきます。
都会は公共交通機関が発達しており、建物間の移動は徒歩で行うことが多く、自然に日常的に歩きます。
地方に住む場合こそ意識して、運動習慣を取り入れて、体を健康に保つ意識が大切なのです。
健康寿命を延ばして自分らしく生きる秘訣
健康寿命を延ばすことが自分らしく生きるコツであることはお分かりいただけたでしょうか?
では次に健康寿命を延ばす秘訣についてご紹介します。
【健康寿命】生活習慣病を知って予防しよう!
生活習慣病とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣により引き起こされる病気のことで、がん、循環器疾患、糖尿病などがあります。
生活習慣病は、健康長寿が短くなる最大の原因になるため、生活習慣病のことを知って予防することがとても大切です。
【健康寿命】食生活を適正にしよう!
主食、主菜、副菜をバランスよくとり、野菜多めのメニューにしましょう。
果物を適度にとることも健康寿命を延ばすことに役立ちます。
また、おやつやジュースをたくさん摂りすぎていませんか?
市販のものや外食には砂糖や、塩分が多く含まれています。
まずは1週間の食事を記録するなどして、自身の食生活を客観的に見てみることから始めてみましょう。
【健康寿命】適度な運動をしよう!
適度な運動は、心臓病、脳卒中、がん、足腰の痛みなど多くの病気のリスクを下げることがわかっています。
18歳~64歳は、歩行以上の身体活動を毎日60分、息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分行うことを目標に、65歳以上は、強度を問わず、毎日40分の身体活動が適切です。
【健康寿命】十分な睡眠を取ろう!
健康維持には休養も大切です。
健やかな睡眠があってこそ十分な休養を取れます。
規則正しい生活をにより体内時計が整い、良質な睡眠が可能になります。
【健康寿命】たばこ、お酒と上手に付き合おう!
たばことお酒は健康を損なう要素として有名ですよね。
たばこの煙には、ニコチンやタールをはじめ、約200種類の有害物質、約70種類の発がん物質が含まれており、これらの物
質が悪影響を及ぼし病気を引き起こします。
また、喫煙する人の近くにいることで煙を吸うことを受動喫煙も懸念されます。
アルコールは肝臓だけでなく全身に及び、健康障害をもたらします。
厚生労働省は、適度な飲酒量を、1日平均純アルコールで20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合、チューハイ350ml缶1本、ウイスキーダブル1杯)としています。
どちらも体への影響をしっかりと把握し、ストレス発散の道具として使う場合には健康を害さない程度に上手に付き合いましょう。
【健康寿命】歯、口腔の健康を守ろう!
近年、歯周病と全身の病気との関連が報告されています。
歯を健康に保つことでしっかりと食事を食べられて、健康寿命を延ばすことに役立ちます。
毎日の歯磨きと定期的な歯石除去をして歯周病を予防しましょう。
いずれも普段の生活習慣を見直すことで改善が可能です。
自分で取り組みやすいところからやってみてくださいね。
健康寿命の延伸にロコモ対策が注目される理由
皆さんは「ロコモティブシンドローム」という言葉を聞いたことありませんか?
現在健康寿命の延伸のために注目されているのが運動器の障害から要介護状態になっている、あるいはそのリスクが高い状態であるロコモティブシンドローム(ロコモ)対策です。
ロコモとは、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、「筋力やバランス能力の低下、骨や間接の病気が原因で介護が必要になる危険性の高い状態」を指します。
エレベーターや車を使う便利な現代社会において、人類は足腰を使う機会が少なくなっています。
ロコモに該当する人は予備軍も含めて国内に約4,700万人いるともされ、新たな「国民病」とも言われています。
実際、運動器系の疾患(関節疾患、骨折・転倒など)は要支援・要介護の認定要因の第1位であり、脳卒中などの脳血管疾患や認知症を上回ります。
厚生労働省が2013年4月から始まる第二次の「健康日本21」の中でロコモの予防を課題の一つとして取り上げ、認知度向上を目標に掲げたこともあり、全国の自治体では、ロコモ対策の積極的な普及啓蒙活動を始めるようになりました。
つまり健康寿命の延伸のためには運動器をいかに健康に保つかが重要なポイントになってくるのです。
自分がロコモかどうかはどのように判断したらいいのでしょうか?
日本整形外科学会のロコモティブシンドローム予防啓発サイトに、簡単なロコモ度テストが載っているので紹介します。
ロコモ度テストは大きく以下の3つに分かれます。
立ち上がりテスト(下肢筋力を調べる)
2ステップテスト(歩幅を調べる)
ロコモ25(体の状態・生活状況を調べる)
実際の体の機能と生活状況の2つの面から総合的に、ロコモの危険がどの程度高いのかを簡易的に診断してくれる便利なツールです。
診断に長い時間はかかりませんし、正しく判定するためのガイドムービーもあります。
ぜひご夫婦やご家族で取り組み、自分の体の状況把握に役立てていただければと思います。
【健康寿命】ロコモ予防のポイントとロコモトレーニング
具体的にロコモの予防ポイントとトレーニングについてご紹介します。
【健康寿命】運動習慣をつけよう!
動習慣をつけることが運動器の健康の維持につながります。
したがって健康寿命の延伸も期待できます。
運動器は若い頃から適度に運動する習慣をつけて大事に使い続けることが必要です。
筋肉、骨、軟骨や椎間板は運動やふだんの生活で身体を動かして負荷をかけることで維持できます。
【健康寿命】適正な体重を維持しよう!
過度な運動や体重超過により「負担をかけすぎる」のも怪我や故障の原因になります。
また、やせすぎると筋肉や骨は弱くなることが知られています。
適度な運動と適切な食生活で自信に適正な体重を維持し、肥満や痩せすぎにならないようにしましょう。
では次に日本整形外科学会推奨のロコトレを紹介します。
とても簡単なトレーニングなのでぜひ日常に取り入れてみてくださいね。
【片脚立ち(バランス能力を付けるロコトレ)】
床に付かない程度に片脚を上げます
床に付かない程度に片脚を上げます。倒れないように必ずつかまるものがある場所で行いましょう。※1日の目安:左右1分間ずつ、1日3回
・支えが必要な人は十分注意して、机に手や指をついて行います。
・指をついただけでもできる方は、机に指先をついて行います。
【スクワット(下肢筋力をつける)】
肩幅より少し広めに足を広げて立ちます
肩幅より少し広めに足を広げて立ちます。つま先は30度くらい開きます。
膝がつま先より前に出ないようにおしりを後ろに引くように身体を沈める
膝がつま先より前に出ないように、また膝が足の人差し指の方向に向くよう注意して、おしりを後ろに引くように身体を沈めます。スクワットができないときは、イスに腰かけ、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返します。机に手をつかずにできる場合はかざして行います。
・膝に負担がかかり過ぎないように、膝は90℃以上曲げないようにします。
・太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入っているか、意識しながらゆっくり行いましょう。
・支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行います。
最後に【正しい知識を付けて健康寿命を延ばし、元気に生きよう!】
今回は、健康寿命を延ばすために心がけたいことについてご紹介しました。
寿命と健康寿命の差を縮めることが、自分らしく生きることの助けになる事がお伝えできれば幸いです。
- 一方「健康寿命」とは”元気に自立して過ごせる期間”の事を指す
- 医療制度が充実していることで平均寿命と健康寿命の差が大きくなっている
- 2016年の結果では健康寿命が長い1位は男性山梨県、女性愛知県
- 健康寿命を延ばすためには生活習慣の見直し・改善が重要
- 下肢の能力を維持してロコモ予防することは健康寿命を延ばすことに役立ちます